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□第2幕
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自分の知らない話も混じっていてよく分からないが、とりあえず…
「…殺されはしないのか?」
「あぁ、約束しよう。私が責任を持って君を殺させはしない」
強い口調でそう言われ、思わず黙り込んでしまう。
ここでの生活が快適なわけではないし、むしろいつも人の影に怯えて生活する毎日は苦痛だった。親しい人間もいるわけでもないし、暮らした年月こそ長いがここが生まれ故郷というわけでもない。
ただ…、
「…アンタについていく理由がない」
ついていかない理由もないが、人助けになるのならと知らない奴についていくほど自分は心が綺麗でもない。むしろ知らない奴らのために実験台にされるのはまっぴらだ。
「やれやれ、無償で人助けはしないタイプか?」
「俺が今までどうやって生きてきてたかくらい、知ってるんじゃないのか?」
さっき放り出した戦利品の入ったリュックを背負いながら言う。
輪という組織がどこまでの情報網を持っているかはしれないが…。
自分の汚い血について知っているんなら、少なからず調べ上げられているんだろう。
「ふむ…君は今まで生き延びるので精一杯で他人のことまで気にする余裕がなかっただけで、実は人助けするのに抵抗がない子かもしれないだろう?」
どこか楽し気にそう言った男の言葉を頭の中で反復させ、思わず身震いする。
「…ありえねぇ」
心底嫌そうな顔でそう言えば、男がまた声をあげて笑う。
「やっと年相応な顔が見れた」
言われて面食らう。
大人ぶっていたつもりはないが、自分の年など考えたこともなかった。
「…余計なお世話だ」
「君はもっと笑ったほうがいいよ、ヒメさん。可愛い顔が台無しだ」
(ぞわっ)
「…っ!やめろ!気色悪い!!」
キザなセリフもだが、慣れない“女の子”扱いに鳥肌がたつ。
「照れなくてもいいだろう?君は十分女性らしいよ」
ははは、と楽しそうに笑ったあと、男はシルクハットをとって恭しく一礼する。
「改めて、ヒメさん?我が輪、第貳號艇にご乗船いただけますか?」