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□第2幕
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結局、自分が輪の艇に乗る理由も乗らない理由も何もない。

けど、この男はどこか信用できる気がした。


他人を信じるなんてこと、したこともなければ自分にできると思ってもいなかった。

だから、っていうのもおかしいかもしれないけど、初めて信じたこの人についていくのも悪くないかもしれない。


「…船での生活が気にいらなかったら逃げ出すから」

「努力の限りをつくすよ。…その前に飛んでいる船からどうやって逃げ出すかじっくり観察させてもらうことにしよう」

「(…う、)…趣味悪いな、アンタ」


ふ、と笑って見返してくる男に悔し紛れにそう返した。


「アンタじゃなくて平門だ。さっき名乗っただろう?」


そうだっけ?と返せば今度は平門が言葉に詰まる。

いい気味だ。


「まったく…」


溜め息をついた平門が不意に近くに来た、と思えば持っていたリュックを取られた。


「あ、ちょっ!」

「これはもう必要ないだろう?船での生活は全て揃えさせている。…他に何か必要なものはあるか?」

必要なもの、と言われて自分の家(とよんでいいのか)を思い浮かべ、殺風景な部屋に持っていくようものなど何もないのを改めて思い知らされる。


「いや、特にない」

「気に入っている服なんかはいいのか?」

「服なんかテキトーに盗んでたし、こだわりとかない。自分のものっていえるのはコレだけだから」


指先でくるくるとナイフを遊ばせて言う。


平門は何か言いたげだったけど、溜め息で吐き出した。

と同時に狭い裏路地に電子音が鳴り響く。


 
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