長編

□不思議な出会い
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物心ついた時には、両親の姿はなかった



けど、おじいちゃんと兄からの愛情で寂しさはなく過ごせていた



優しいおじいちゃんと心配症の兄

おじいちゃんは大工の仕事をしながら
私たちのご飯、洗濯などの家事もこなしてくれた




そんなおじいちゃんも私が中学に上がると同時に亡くなってしまった

その時から、私は必死に家事を覚えた





兄は寮のある学校に通っていたため
必然的に一人暮らしになった




おじいちゃんが残してくれた財産で
安いアパートを借り知り合いのカフェでアルバイトをしながら生活費を稼いで

高校はなるべく安い所を選び
そんな生活にも慣れてきたこの頃












「ありがとうございました!」








私は高校3年生になった







「んー終わった終わった!」

「おつかれさま!亜弓ちゃんは良く働いてくれるわねー」

「いやーこの仕事が生き甲斐って感じですよ!」








最後のお客さんを送り出し
店長といつものように雑談が始まる







「ほんっと昔から偉いよ。ほぼ毎日、学校帰りにバイトして」

「自分でも驚きですよ!立派に育ったものですよ」

「ふふっ、もう高校3年生か・・・早いわねー」

「学校では進路進路で煩いですよまったく」









そう、高3ともなれば進路を決めなければならない
特にやりたいこともない私は
どうしたものかと迷い中だ









「ずっと此処で働いてくれていいんだよ?」

「困ったらそうさせてもらいまっす!」

「軽いわね(笑)」

「じゃあ今日はもう上がりますね!お疲れ様でした!!」

「はいはい、おつかれさま。」


















暗く静まり返った帰り道
そりゃそうだ、時計はもう22時を過ぎている



そしてこの時間になると決まって兄から電話がかかってくる







「今日は何もなかったか?イジメとかは?」

「毎日同じこと聞いて飽きないの?」

「人生ってものは何が起きるかわからないんだぞ!!」

「大丈夫だから。イジメは受けてないし、バイトも楽しいし、ご飯もちゃんと食べてる」

「そうか!」







昔から心配症な兄


道でこければ大泣きをし
くしゃみをすれば"亜弓が死ぬ!!"と大泣きし
私にちょっかいを出す奴がいればフルボッコにし
私に告白する奴がいれば精神的にダメージを与える





心配症の度が過ぎている兄なのだ









「あと、お金は送らなくていいって何回言えばわかるの」

「念の為だ!!」








そしてもう1つ困った事と言えば
毎月、大金を私に送ってくるのだ


ほぼ毎日バイトをしている分
家賃もちゃんと払えてるし
生活費にも困っていることはまったくない



だが、兄はそんな私の言葉を無視し
お金を送ってくる








「貯めておく事に越した事はないだろ」

「そうだけど・・・。送りすぎ兄貴は大丈夫なの?」

「おう。雑誌記者しているせいで使う暇がないからな」








私の生活を心配するより
自分の生活を心配してもらいたいものだ







「はぁー…まぁ、ありがとうね。もうすぐ家だから切るよ?」

「おぉ、そうか。おやすみ」

「おやすみ」








ピッ









兄との電話を切り
静かで真っ暗な家に私は帰宅した












 
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