長編

□え?アイドル?
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「あれ?雪野さんがスカートなんて珍しいね!」

「スカート履いてるの始めてみたよ」

「似合ってるね!」





藍ちゃんと出掛けたあの日
スカートを買ったのは良いものの
制服以外のスカートなんて小さい頃に履いていたくらいで
結局タンスの中に仕舞い込んでしまって何日か過ぎてしまった
スカートの存在を忘れていた時に事務所内の廊下で藍ちゃんに出会い
そういえばあの服どこに仕舞ったっけ?と疑問になり

まだ、タグの付いたスカート二枚を部屋に広げた
いくら恥ずかしいからといってせっかく購入したのに着ないのは
選んでくれた藍ちゃんにも失礼だと思った私は今日スカートを履いて来たのだが…

よっぽど珍しいのか顔見知りのスタッフさんなどからスカートに触れられる
まさかこんなにも目立つとは思わなかったな…

恥ずかしい








「あら!亜弓ちゃんがスカートはいてるぅ〜!!」





後ろから聞こえたのは一番見つかりたくなかった林檎さんだった
タタタッと素早く近づいてきて頭の先から足の先までを見てうれしそうな表情を見せた





「やっぱり似合うじゃな〜い」

「あっありがとうございます…」

「誰かにもらったの?」

「いえ、藍ちゃんに選んでもらったんです」

「え?藍ちゃんって美風藍ちゃん??」

「はい」





藍は人に合わせるタイプではないため誰かと出かけるという時点で驚くだろう





「2人ってそういう関係だったの?」

「まさか。服買うのなんて久しぶりだったので藍ちゃんに見立ててもらったんですよ」

「そうよね〜亜弓ちゃんが恋愛なんて考えられないもの!」




それはそれでなんだか腹が立つな
林檎さんに刺さるような視線を送っていると林檎さんは私に気づきフフフと笑った





「大丈夫!亜弓ちゃん可愛いからすぐにいい人が見つかるわよ!!」

「別に彼氏は要りません」




私の答えに林檎さんは「ええ〜!なんで!!」とオーバーなリアクションを見せる




「なんでと言われましても」

「デートしたいとか憧れはないの?」

「一度してあんまり楽しくなかったんです」




私の発言に林檎さんは2度目の驚きを見せた




「一度ってことは彼氏いたの!?」

「兄が極度のシスコンだったので、なんだかそれに反発したくなって。何となくの流れで」

「どうだったの!?どうだったの!?」



よほど珍しいのだろう
林檎さんはこれでもかと言うくらい顔を近づけて来て聞き出そうと必死だ



「別にただ街をブラブラと歩いただけですよ?」

「それは付き合ってるっていうの?」

「だって、もともと男性にそれ程興味ないんですよ」




そう、まずはそこからなのだ

すれ違い際に背が高いな、顔が整ってるななど
消して興味が0%なわけではない
だが、友人以上の関係になりたいという願望はないのだ

街中で多くのカップルを見かけては「楽しそうだな」と自分がああだったらとは思わないのだ





「もったいないわね〜」

「そうですか?」

「よーし!そんな亜弓ちゃんにこの月宮林檎が協力してあげるわ!!」




協力って…





「今日の収録でカッコいい人気モデルの子がいるの!その子と少し話してみたら?」

「いいですよ。それにそんな理由で人気なモデルさんと会うわけにもいきませし…」

「大丈夫よ!私がいるんだから!!ほらっ行くわよ!!!」

「ちょっと!」




林檎さんに腕を引っ張られその人気モデルさんに会うことになった
あっても何を話せばいいのかわからない
大体、男性モデルさんって何に興味があるのだろう?


そんなことを考えているうちに人気モデルさんの楽屋に着いた





「私が呼んだら入ってきて」

「わかりました」




転校生にでもなった気分の会話を済ませ
林檎さんは控室へと入っていく
中からは林檎さんの高い声と、男性の笑い声が聞こえる

モデルと聞いて勝手にクールで無口な人と想像していたたため、少しホッとした





「亜弓ちゃ〜ん入ってきていいわよ〜」

「失礼します」





ドアを開けて入ると林檎さんが笑顔で迎えてくれる
モデルさんは丁度林檎さんに隠れて見えない状態だ
きっと向こうも私の姿は見えていないだろう
それに気づいた林檎さんはスッと横に移動してくれた

だが、初めてのはずの私たちはお互いの顔を見て目を見開いたのだった






「あ…にき…?」

「亜弓?」


 
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