長編

□人の縁とは怖いもの
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 私の兄は度が過ぎるシスターコンプレックスで、私の身の回りをすごく心配してくれる

 だが、それが行き過ぎると私もその好意を鬱陶しいと思えてきてしまい…隠し事をする事が多くなった
 その隠し事がバレたとなればどうなることやら





「なんでお前が亜弓の家にいるんだ黒崎蘭丸」

「…………」




 バレてしまった

 蘭丸と出会ってから兄貴との連絡が急激に減った
 そのことが気になった兄貴は今まで異常にメールや電話をしてくるようになった
 けれど、仕事をするようになった私はその連絡を無視するようになり、返事を返しても短くて素っ気ないものばかり
 それに耐えかねた兄は今日私の家に突然やってきた、夕飯を食べに来た蘭丸がいることも知らず





「亜弓、これはどういうことだ」

「えっと…まぁ、簡単に説明しちゃうと私が蘭丸を助けたのをきっかけに夕飯をご馳走するようになって」

「それで頻繁にお前の家に出入りしてるわけか。言っておくが、俺じゃなくてもおかしいと思うぞ」



やっぱり



「女嫌いという噂を聞いてたんだが、飯が食えれば誰でもいいんだな。」

「変な言い方すんな、もともとはコイツが誘ってきたんだよ」

「飯が食えれば見ず知らずの女の家に上がり込んで飯を食わしてもらうのか」

「………コイツ、いっつもこんな感じかよ」

「そう」




 兄貴のことを私の口でしか聞いてなかった蘭丸は納得しつつ、呆れた表情を私に向けた



「前から変なん奴だとは思ってたが、ここまでとは


「お前には言われたくねーよ」




兄貴はハァーと大きな溜め息をはいたあと私に向き直り



「亜弓をシャイニング事務所から退職させる」



と言った



「ちょっと、何勝手なこと」

「亜弓、男は危険な生き物なんだ。ましてや芸能界なんて、コイツみたいにチャラチャラした奴が沢山いるところにお前を置いておけない」

「誰がチャラチャラしてるってんだよ。そいつを連れて行かれんのは困る、俺のマネージャーだからな」

「お前のマネージャーなら余計にだ」



兄貴は私の腕を掴み玄関へと足を動かした



「どこいくの!」

「今日はとりあえず俺の家に来なさい」

「兄貴!やめてよ!!」

「おい、嫌がってんだろーが!それでもこいつの兄貴かよ」



嫌がる私の様子をみて蘭丸がすかさずに助けに入ってくれた
そしてまた、兄貴と蘭丸の言い合いが始まった

あまりに強引な兄貴の行動や言動に私も耐えられず



「いい加減にしてよ!!」



捕まれていた手を振り払い
今までにないくらい、兄貴を睨みつけた


「兄貴はこれまでのこと知らないからそんなことが言えるのよ!」

「亜弓」

「1人での静かな部屋で静かにご飯食べるのが寂しかった。でも、蘭丸はその寂しさを埋めてくれた…それだけじゃない!誘拐されそうになったときは助けに来てくれた!!怪我をしたときには家まで運んでくれた…そんな蘭丸を勝手に悪者扱いしないで!!」



自分の思いをぶつけるうちに、目から自然と涙が溢れていた
蘭丸が本当は優しいことを知って欲しかった
見てもいないのに勝手に悪い奴に仕立て上げていく兄貴を許せなかった




「どれだけ蘭丸に助けられたか……そんな彼のことを悪く言う兄貴なんてだいっきらい!!!」

「…ごめん」



私の頭を優しく撫でる兄貴の手が懐かしく思えた




「そうだよな。今まで寂しい思いをさせていたのは俺なのに…その寂しさを埋めていてくれた人物の悪口を言われたら怒るよな、ごめんな」

「…兄貴」

「黒崎も悪かった」

「……」

「はぁー俺も兄失格だな。でもいいか、連絡だけはちゃんとしろよ?心配でたまらない俺の気持ちもわかってくれ。これからも妹を頼んだ」



そう言って兄貴は寂しそうな笑顔を見せて部屋を出て行った
一気に沈黙がながれ、大泣きをした顔を見られるのが恥ずかしくて
私は蘭丸へと話しかけた



「なっなんかゴメンね。」

「いや」




そしてまた、沈黙が流れる。
沈黙に耐えきれなかったのか、蘭丸はくるっと体を方向転換させて、部屋へと戻っていく




「おい」

「え、なっなに?」

「これからも飯、食いに来て良いんだよな?」

「えっ………あ、もっもちろん!」





その言葉が嬉しくて
私はこれからもこの人と一緒にいられるのかと思うと
さっきの涙は嘘のように乾いていた







 

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