長編

□不思議な出会い
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「よいっしょっと」





とりあえずベッドに男の人を寝かせ
台所へと向かう

昨日の残り物の肉じゃがと
相当お腹が空いている様子だったから
牛肉を使った野菜炒めでもするか


明日買い物に行かなければ









「久しぶりだな、誰かに作るの」









少し嬉しかった

私以外の人がこの家にいることが
見知らぬ男を家に入れたと知ったら兄貴きっと怒るだろうな



野菜を手際よく切り分け
フライパンに油を引き、具材を放り込み炒める
キッチンから男の人の様子を見ながら料理を進める






肉野菜炒めが出来上がり、白米を茶碗によそい
レンジで温めた肉じゃがと一緒にお盆にのせテーブルへと運ぶ










「あの、簡単なものしか出来ませんでしたが・・・どうぞ?」







私が彼の肩を掴み体を揺すると
ベッドでダウンしていた男の人は目を薄く開き鼻をくんくんと動かした

その途端、男の人はガバッと体を起こしテーブルの料理にがっついた



その様子を静かに見守る



あっという間に私の作った料理を平らげてしまい
見ていて気持ちのいい位の食べっぷりだった




男の人はふぅーと一息ついた後私の方を見た




改めて見ると左右違う色の瞳に

ばっちりと化粧をしている目元

整った顔立ちに思わず見惚れてしまう









「テメー誰だ」

「あ。えっと、雪野亜弓と言います」







低く男らしい声に荒々しい口調に少し恐怖を感じた









「これ作ったのはお前か?」

「はっはい・・・お口に合いましたでしょうか」








不味かっただろうか、けれど野菜炒めの味付けは塩コショウしかしていないし
肉じゃがは中々の出来だと昨日感動したぐらいうまくいった

あっ、まさかご飯に何か!!







「あぁ、うまかった。」








嫌な汗が背中をつたった後に聞こえたのは怒鳴り声ではなく
優しく発せられた褒め言葉だった

下を向いていた顔を上げると頭を掻きながら罰が悪そうに視線を外す男の人だった



その姿に私は少し笑いがこぼれてしまった


その様子を不快に思ったのか男の人は「何がおかしい」と
不機嫌な表情を私に向けた







「あっすみません!別に馬鹿にしているとかそういうのではなくってですね!!悪い人じゃないんだと安心して!!」

「・・・・・まぁ、助かった。ありがとよ」






私の怯えた様子にまたそっぽを向いてしまう男の人






「あの、なんであそこに座り込んでいたんですか?」

「・・・仕事が忙しくて飯もろくに食ってなかったんだよ。帰りになんか買おうと思ったが財布を家に置きっぱなしにしてたの思い出して」

「限界がきたんですね」

「そういうことだ」








仕事ってさっきの背負っていたものを使った仕事だろうか

少し気になったがそこまでプライベートな事を聞くのは失礼だと思い心に仕舞う










「今は何も出来ねーがこの礼はいつかする」

「そんないいですよ」

「こういうのはキッチリしねーとロックじゃねーんだよ」








ロック?







「邪魔したな」

「あっいえ!今度からは気をつけてくださいね!!」

「・・・・おう」









バタンと閉まった扉を私は数秒眺めていた










なんだか、不思議な夜だったな







 
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