長編

□アイドルでした
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「蘭丸!」




まさかの人物に私は彼に駆け寄った





「どうしたの?仕事は?よくこの店ってわかったね!」

「興奮しすぎだ!今日は偶々仕事が早く済んだから、お前ん家の近くにあったここで待ってただけだ」

「そうなんだー」






蘭丸と話していると店長からまた手招きをされる






「何?知り合いなの?」

「えっと、前に話してたご飯作った人です」

「あぁー、あの人なの?随分コワい人ね」








店長は怪しいものを見るように蘭丸の姿を伺う
まぁ、初めて見たとき私も思ったことだからなー

他のお客さんもなんだかビクビクしちゃってるし








「そんなに怪しまなくても大丈夫ですよ?だって、お礼の品をワザワザ家まで届けに来た位なんです」

「それでも怪しいじゃない」








店長に蘭丸をわかってもらうのは時間がかかりそうだ…







「まっ、危なくなったら私に言いなさいよ?」

「大丈夫ですって!」






そこからのバイトが終わる時間まで、蘭丸は本当に待っていてくれた
テーブルに楽譜を広げ、1人静かに指でカウントをとったり、携帯をいじったりと暇を潰していた

その意外なまでの大人しさに店長を悪い人ではないのか?
と、若干疑いながらもさっきほどの視線を蘭丸に向けることはなくなった








「おまたせ、それじゃー行こっか」

「おう」






2人で店を出ようとしたとき






「アンタ、蘭丸とかいったっけ?」






店長が少し低い声で蘭丸の名前を呼んで引き止めた








「あぁ」

「その子に変なことしてたら、私が怒るからね」

「変なことってなんだよ」

「変なことは変なことよ」






なんでこんな嫁入りする感じの雰囲気









「店長、私たち別に結婚するわけじゃないんだから」

「亜弓ちゃんは危機感が足りないのよ。一人暮らしの家に男が入るなんて」

「私から誘ったからいいんです!」







さよなら!と半ば無理やり店を出て私達は歩き出す





「なんかゴメンね?」

「いや、アイツの言ってることは分かるからな」





意外にこういうのでは怒らないんだ







「よーし!今日は何作ろう!」

「肉」

「アンタは肉しか言えないわけ?」

「うるせっ、肉のどこがワリーんだよ」






誰かと帰りながら、夕飯の相談?をしてワイワイ言いながら帰る

こんなの何年ぶりだろうか
ちょっとしたことがなんだかくすぐったくて、楽しい







「今日は肉じゃがにするから」

「肉メインじゃねーのかよ」

「うるさいなー!!文句言うなら食べさせないから!」







そういうと、蘭丸はさっきまでのが嘘のように黙ってしまった
この人の胃袋って本当にどうなってるんだろう…
いつもお腹空かせてるイメージしかないんだけど


蘭丸の膨れっ面を見ていると、ポケットに入っていたケータイが鳴る
相手はこの間CDを借りた友人からだった




″雑誌買ったから明日持って行く!″





という内容に画像が添付されていた
画像はアイドル雑誌で、一人の男が表紙を飾っていた




″黒崎蘭丸″





んん?

黒崎蘭丸?
しかも、顔もそっくりなような……


あれ?







「ねえ、蘭丸」

「んだよ」

「蘭丸ってアイドルなの?」

「おう」









ええええええええ!?!?






「聞いてないんだけど!!」

「別に言うほどの事じゃねーだろ」

「言うほどのこと!!」





そうだ!
この間借りたCDのボーカルの人の名前黒崎蘭丸って書いてたんだ!!


えー!!
ってことはアタシとんでもない人と今一緒に歩いてるわけ!?

しかも夕飯とかも私の家で食べてるし!
これって大問題なんじゃ!?






「一般人とこんなことしてて問題にならないの!?」

「あぁ?別にやましいことはしてねーんだし、バレなきゃ平気だ」








アイドルがそれでいいのか!!?










知り合いになった彼はなんと、今をトキメクアイドルだった







 







 
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