長編

□力仕事に無理は危険
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嶺二との会話を無理やり終わらせ渡しはその場を去った
嶺二はあぁ見えてすごく気にしてしまうタイプだから話が長くなるとメンドウだ
さっさと帰ってサロンパス貼れば大丈夫だって

とはいえ、足の痛みは酷くなるばかり、駅までは結構あるし少しキツイかもしれない
横のおばあさんにまで追い向かされてしまうほどゆっくり歩いているほどだ




(明日は4人合同のバラエティー番組の付添いだけだし…社長が何も問題を起こさなければ)





明日の予定(予想外のことも含め)を頭でシュミレーションしながら駅の改札を通ろうとした時だった






パシッ





「え?」





誰かに怪我をしている方手首を掴まれ痛みが走るが、それよりも誰が私の手を掴んだのか気になり振り返る




「…蘭丸」




私を掴んだのはここに居るはずのない蘭丸だった
蘭丸の後ろには彼が愛用している大事な自転車が地面に倒れていた
けれど、そんなことよりも何故、蘭丸がここにいるのかだ





「なんで?」

「嶺二から連絡がきた。お前が足ケガしたってな」




また余計なことをしてくれたものだあの芸人アイドル
だが、自分にはまったく関係のないことなのにワザワザ私を迎えにきてくれたの?




「いつもみたいに無視すればよかったのに」

「なんか胸騒ぎがしたんだよ。んで電話に出てみれば予感が的中ってわけだ」

「仕事じゃなかったの?」

「ライブが終わった直後だったんだよ。んで即行できた」




そう言って事情説明が済むと蘭丸は私を強引に引っ張り駅から離れていく




「帰るって…電車で帰るよ」

「バカか、この時間電車込んでんだろうが。酷くなんぞ」




地面に倒れた自転車を起き上がらせサドルに跨り"んっ"と言い後ろを指差す





「ん…って」

「2人乗りで帰るに決まってんだろーが」





蘭丸が優しすぎる!!
いつもこんなにも優しくないのに…まさか




「偽者の蘭丸?」

「あぁ?何バカなこと言ってんだ。とっとと乗りやがれ!!」

「わぁっ」




腕を掴まれ勢いで後ろに乗ってしまい
降りようとする前に自転車は前に進んだ
慌てて蘭丸の背中に掴まり体制を立て直す




「なんで迎えに来てくれたの?」

「…礼だ」

「わたし蘭丸に何か恩売った?」

「いっつも飯ご馳走になってる礼だ!!」




急に大声を出した蘭丸
彼は照れるときには大声を出してしまう癖があるのをわたしは知っている
その証拠に後ろから微かに見える耳は赤くなっていた



「なにを今更照れてんの」

「照れてねーよ!!黙って後ろに乗ってろ!振り落とすぞ!!!」

「迎えの意味がないじゃんそれ!」

「うるせぇ!!」





なんだか嬉しくて顔が緩んでしまう






「二人乗りなんて青春だね!」

「あっそ」





そっけない返事はまだ少し照れている証拠





「今度、肉料理たくさん作ってあげる!」

「なんだ?急に機嫌よくなりやがって」

「いいの!早く帰って手当てしてよね!」

「俺がすんのかよ!!」





最悪な一日がこの数分の出来事ですべて吹っ飛んでしまった
たまには怪我をするのもいいかもしれないと罰当たりなことを考えてしまった







 
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