長編

□ハロウィン
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「いや〜ん!!亜弓ちゃんとっても綺麗よぉ〜!!!」

「………ありがとうごさいます」



鏡に映る自分を見ると
そこには赤いドレスに身を包んだジュリエットがいた
メイクとウィッグ付き帽子のおかげで着替える前の私はパッと見てわからないだろう



「こんなに綺麗なジュリエットにロミオがいないのが残念だわ…」

「そんなことより………これ、すごく歩きづらいです」



ロングドレスなど着たことのない私は長い裾を踏みそうでおぼつかない歩きになっている



「まぁまぁ、ダンスタイムはあるけど亜弓ちゃん踊らないでしょ?だったら壁側で料理をたのしんでるといいわ!」



それもそうかとまんまと林檎さんにのせられ私たちは会場へと戻った

会場に戻ると中心で林檎さんが言っていたダンスタイムが始まっていた
その光景はなんともふしぎなものだった
悪魔とフランケンシュタインが踊っていたり
猫と包帯男が踊っていたりとバケモン同士が踊っているのだから




「なにか取ってきてあげるからここで待ってて!」

「ありがとうございます」



林檎さんの言葉に甘えて私は壁にもたれダンスを見ていた
いまだに慣れないこの光景……
有名人たちが綺麗な自分を飾り集まる場
こういうのに参加するたびに懲りずに思うこと

私は本当にここにいていいのか

そしてそんな思いをいつも忘れさせるあの人




「お前、何やってんだよ」




狼男


に扮した黒崎蘭丸だ


左手に持っているお皿の上には大量の肉料理
期待を裏切らない人だな……




「蘭丸が参加するとはおもわなかった」

「肉のためだ」




彼はどうしてここまで食べ物のため尽くせるのかわからない




「あれ?亜弓ちゃんじゃない!!」




蘭丸の後ろから包帯男、ドラキュラ、妖精が近づいてくる



「わぁー!ジュリエット似合うね!」

「嶺二も包帯男似合ってるよ」

「菓子をよこせ」

「ドラキュラなら血をよこせとか言えないのカミュ」

「亜弓がジュリエットを着るとは思わなかったよ」

「わたしも藍ちゃんがそんな可愛い妖精になるとは思わなかったよ」




いつも見慣れているはずの4人が絵本から出てきたかのようだ
中々おもしろい光景に思わず笑みがこぼれた



「亜弓ちゃん1人?」

「林檎さんが料理取ってきてくれてるの」

「だったら待ってる間ぼくと踊らない?」

「いいけど…私ダンスなんて出来ないよ?」

「お兄さんに任せなさい!!ちゃんとリードしてあげる!!」



えっへん!と胸を張る嶺二にたまにはいいかと思えてしまった
差し出された腕に手を絡めようとすると蘭丸の大きな手に阻止された

蘭丸はそのまま黙って私を中心へと連れて行った




「レイジ…ワザとやったでしょ」

「お節介な奴だ」

「だってランランぜーんぜん進歩しないんだもーん!」





 
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