長編

□ハロウィン
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次の曲の準備のため音楽が止まっている間
蘭丸がダンスの説明をし始めた



「ドレスの裾を掴んで空いてる手は俺の手を掴んでろ、後は曲に合わせるだけだ」

「でも、社交ダンスなんて一曲もわからないし……だいたい蘭丸は」



踊れるの?と訊こうとしたとき
曲が流れ始めてしまい、蘭丸の左手が私の右手を取り
蘭丸の右手が私の背中へと回された

さっきまで落ち着いていた心臓の動きが急に変わる
鼓動が早くなり握られた手があつい

優雅な曲に合わせステップをする蘭丸
随分の馴れているように見えた



「意外」

「なにがだ」

「蘭丸ってこういうダンスできそうに見えないもの」

「………昔のが体に染み着いてるだけだ」




昔って………カミュみたいにどこかの貴族だったとか??

自分の過去を話さない彼に深く聞いてはいけないと思った私はそれ以上何も言わず蘭丸に身を任せて踊り続けた

見つめ合う私たち、どことなく真剣な表情の蘭丸に目が離せなくなりそうだ

黒崎蘭丸がダンスをするのが珍しく
みんなが私たちをみているのがわかる



「みんな見てるね」

「見せものじゃねえぞ」

「だったら踊らなきゃいいのに」

「………気分だ」




こういう時、蘭丸の考えが読めない
いつもはこんなこと絶対に拒否する彼がごくマレにこういったことをする時
いったい何を考えているのだろう 

曲が終わり密着していた体が離れる
当たりを見渡すと皆が私たち2人に拍手をしていた




「亜弓と黒りん最高だったわよー!!」



いつのまにか戻ってきた林檎さんが目をキラキラさせて私の手を握る
やっぱり、彼じゃないと心臓の動きは変わらない
熱もおびない

無理やり踊りに誘った本人は預けていた料理をまた食べ始め
何もなかったかのようにお皿に集中している

ダンスを踊ったのも
こんなに体があつくなるのも
彼だけなのは何故なのだろう




それに気づくちょっと前の出来ごとの一夜のお話










 
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