短編

□愛して
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私の彼氏は人気アイドルの黒崎蘭丸

蘭丸とはもう5年の付き合いになる



5年前、告白したのは私からだった
その当時は、フラれることを前提に告白したので
OKをもらった時は、涙が溢れるくらい驚いて嬉しかった



今年で22になった私…もう立派な大人

この年齢になると、考えるのは"結婚"




5年も付き合えば、そろそろいいかな?
とも思うのだが………

相手はあの女嫌いでロックの事しか頭にない蘭丸だ

そんな彼と付き合っている時点で奇跡に等しいものだが
ツンツンで不器用な蘭丸から結婚の申し込みなんてものは、もう諦めている


だから私は、さりげなく指のサイズを測ったり
ジュエリーショップへと何度も足を運ぶのだが
いつも見るだけで、すぐに帰ってしまう





というのも、やはり告げるのが怖い




もしも、断られたときは、どうすればいいのか

そんなことが頭を過る






「はぁー・・・」



思わずため息が漏れてしまう




「どうしたの?」



私のため息を聞き、声をかけてくれたのは先輩である月宮林檎
林檎とは、よく買い物に行ったり、相談をする仲だ




「蘭丸に結婚の申し込みをしようと思うんだけど…」

「えっ?亜弓ちゃんからするの??」


私の言葉に林檎は信じられないとでも言いたそうな顔を見せた



「だって、蘭丸からしてくれるなんて考えられないし」

「でも、告白したのは亜弓ちゃんからでしょ?」

「………そうだけどぉ」



蘭丸は人気アイドル
仕事が忙しくて最近はほとんど会っていない

蘭丸の気持ちがどんどん離れて行きそうで不安なのだ



二回目の溜め息を吐くと同時に、楽屋のドアが開いた


「おつかれさまでしたーって亜弓がいる!」

「やっほ〜」



入って来たのは一十木音也だった

音也は人懐っこく秋田わんこみたいな奴



「林檎と同じ収録だったの?」

「うん!なんの話してたの?」

「ん〜…蘭丸にいつ告白しよっかなと思って」

「なんの?」

「結婚の」

「…………」



結婚と単語を聞き、数秒動きを止めたあと
音也はえぇー!!!!!と叫んだ




「亜弓結婚しちゃうの!!?」

「いや、まだ話もしてないから」

「あっそうなんだ、でも亜弓から言うの?」

「林檎と同じこと言ってる」




音也が林檎と同じことを言うものだから、笑ってしまう




「そういうのって男からじゃない?」

「そうよね?」

「じゃあ蘭丸が結婚してくれなんて、言うと思う?」

「「…………」」




ほらね。


最近仕事が邪魔をして会えないせいなのか、変に焦ってしまう。

なんだか、私だけが蘭丸のこと好きみたいで……凄く寂しい




「うぅーん…」

「亜弓ちゃん…」

「………」

「俺は嫌だな」



音也の言葉に私は動きを止めてしまった。



嫌って…何故に?


「俺は亜弓が結婚しちゃうの嫌だ」

「…どうして」

「亜弓が好きだから」



…………!!?

えっ



今、音也…私に好きって言った?



「まさかのこの状況で言う?」

「だって亜弓結婚しちゃうかもしれないし」




そう言われると言い返せない



「俺、亜弓と初めて会った時から好きだよ」

「蘭丸と付き合うずっと前じゃん!!」



音也はそれまでずっと私を好きでいてくれたってこと!?

なんて一途な人なんだろう……。




「ねぇ?亜弓」


うっ、出たよ子犬攻撃

これに逃れられた覚えがほとんどない



私は林檎に助けてとアイコンタクトをとるが、林檎はニヤニヤしながら「ごゆっくり♪」と言葉を残し楽屋を出ていった




「林檎のばかぁぁぁぁあ!!」

「リンちゃんより此方を見てよ」

「ひぃ!!」



音也は私越しに後ろにあるテーブルに両手をつき逃げられないようにする

しかも座っているので、音也の顔が上にある。

音也がこんなに攻めてくるとは…




「今ならまだ間に合うよ?」

「まままま間に合うもなにも私は!!!!」

「そんなに俺じゃダメ?」

「ダメとかじゃなくて!!」



音也の顔がゆっくりと私に迫ってくる

近づくにつれて私の顔が火を噴きそうになる




「亜弓」

「おっ音也!早まるな!!」



唇と唇が触れ合うまであと数センチ、必死に音也の胸板を押すが…男と女だ、敵うはずもなく、ドンドン近づく


もうダメだと、半分諦めた時、楽屋の扉がバンッとすごい音を立てて開いた

扉の方へ視線を向けると、物凄い顔をした蘭丸が立っていた



蘭丸は私達を見ると、音也をキッと睨みズンズンと歩み寄ってくる
そして、音也の胸ぐらを掴み拳を振り上げた

これはヤバイ!!!



「ちょっ!タンマタンマ!!」


私は蘭丸が振り上げた腕に必死に捕まった



「離しやがれ!!コイツだけは許さねー!!!!!」

「私は何もされてないから!!ねっ!?大丈夫だから!!!それより仕事終わったんなら帰ろ!!!!」

「………ちっ」



蘭丸は、音也の胸ぐらを投げるように離し、その手で私の手首を掴むと扉へと競歩で向かう



「音也!またね!!」


私が音也に声をかけ終わると同時に扉は閉まった








「…………死ぬかと思った;」











蘭丸は私の腕を強く握ったまま荷物を持ち外にでる

よく見ると蘭丸の首筋からは汗が流れていた、手からは蘭丸の体温が伝わってくる



走ってきてくれた?




「なんで私のいる所がわかったの?」

「月宮さんが亜弓がヤられそうになってるっていうから」





林檎ちゃん…………





「オメーは何であぁなった」

「いろいろ話してたら、なんか……音也から告白されて…」

「いろいろってなんだよ」



蘭丸との結婚


なんて言えるわけもなく、私は真っ赤な顔を隠すために俯く



「………俺には言えねーことなのかよ」




蘭丸が足を止めて言う


いつも見たいにキツイ言い方ではなく

どこか、寂しそうな・・・




「・・・わかった」



蘭丸が私の腕を離し、歩いていってしまう


わかったって・・・何が?

なんで、言っちゃうの?





待って





「っーーーーばかぁぁぁぁあ!!」

「!!!!??」


私の大声に蘭丸はビックリして、足を止める



「蘭丸の馬鹿!!音也とはアンタとの結婚のこと話してたんだよ!!」

「!!!?」

「いつ告白しようとか、いつ指輪買おうとか、いろいろ考えてて!!それを音也に話したら好きだったって言われて!!!逃げれなかったの!!!」




マシンガンのように私は一気に喋った

話しおわった後は我に帰り顔が一気に赤くなる
恥ずかしさで今なら死ねる気がする


何言ってんだろ

こんな告白したくなかったのに



涙まで出てきてしまった




「いっ今のは忘れて!!私用事思い出したから帰る!!」

「おっおい!!」



蘭丸の言葉を聞かず私は走り出した

久しぶりに会えたのに

久しぶりに顔を見れたのに



可愛い顔で会いたかった






「待てっつてんだろーがぁぁぁ!!」

「ひぇぇぇぇえ!!」



だがそんな気持ちを余所に蘭丸は豪速球で私の後ろを追いかけてきた




「恐い恐い恐い恐い恐い!!!」

「じゃあ止まりやがれ!!」




それは嫌!


それでも、私はヒールだったので、追い付かれてしまいまた、手首を掴まれる



「ぎゃぁぁぁぁあ!!たすけてぇぇぇえ!!!」

「俺が変質者みたいに言うな!!!くっそ」

「!!?」



蘭丸は私手を思いっきり引っ張る

それに逆らえず、私は蘭丸の胸に飛び込んでしまう。そこから逃がすまいと蘭丸は私を力一杯抱き締めた



あのツンツンな蘭丸がこんなことをするのは始めてだった

だから凄く恥ずかしい




「ちょっ!やめてよ!!」

「結婚の申し込みってのは……」

「…………っ」



断られる




「男からするもんだろうが」

「………え?」



蘭丸の言葉に耳を疑い、顔をあげると蘭丸が此方をじっと見ていた

そして、私から体を離して彼はバッグの中をあさりはじめた

出てきたのは小さな小箱



まさか…



「亜弓…俺と結婚しろ」

小箱お開けると、キラキラと光る指輪だった

これは夢?



「いつ………」

「………2、3ヶ月前」



結構前ですね



「告白もお前に先に越されちまったしな、結婚くらいは俺からさせろ」

「本当に私でいいの?」

「お前以外に初めから考えてねーよ」













(あっ音也だ!)

(あっ亜弓ー!!)

(……………)

(あの、黒崎先輩……恐いです;)

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