TOX2

□弟なんだから・兄なんだから
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最近ルドガーの様子がおかしい。
気のせいかもしれないが、俺の行動・態度・状況で一喜一憂している気がする。
今日会社に迎えに来てくれた時も、俺のファンの女性達に嫌そうな顔をして、だが俺の一言でひどく嬉しそうな顔になった。
『兄さんはさ、俺のこと好き?一番?誰よりも?』
自分が愛されているか、それに一番か。
そんなこともよく聞かれるようになった。
もちろん愛してる。誰よりも、一番。たった一人の弟だし、なにより――
俺はルドガーのことを、恋愛対象として見ている。
ただ、勘違いしてはいけない。ルドガーが聞く『好き』は、家族としてのものだ。幼かったルドガーから母親を奪い、家族を兄だけにしてしまったのは俺であり、だからこそルドガーは俺に恋人ができたら一人になるようで怖いんだろう。
(ルドガーから家族を奪ったというのに逆に家族を与えられて、その上恋愛対象として見るなんて、俺は本当に最低な人間だな)
罪滅ぼしとしてルドガーを守ると決めた。だからルドガーの望むことはなんでもしてやるし、望まないことは絶対しない。
「兄さんどうしたの?」
声をかけられてハッとする。握っていた手に力が入っていたようで、愛しい弟が心配そうにこちらを見上げていた。
「すまない、痛かったな。……ところで今日の夕飯はなんだ?」
ハハハと笑ってごまかし、話を変える。
「トマトクリームシチューだよ」
「それは楽しみだな。早くうちのシェフの料理が食べたいよ」
俺もルドガーも笑う。これでいい。ルドガーの望む家族としての日時を過ごせればそれで。
俺は兄なんだから。


END

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