Dendrobium Phalanopsis type
□プロローグ
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Prologue
生臭い血の匂いに流石の“彼”も吐き気を覚えたが、必死に“その人”を探す。
辺りは死人の山と、どす黒くなった血の海が広がるばかりで、人っ子一人どころか、生きた精霊の姿も見えない。それでも“彼”は“その人”を探した。
日が暮れても“彼”は“その人”を探し続けた。
そうして、じき夜が明けるという頃、彼は遂に“その人”を見つけた。
血のこびりついた顔は青白く、まるで死んでいるかの様だったが、微かに上下する胸元がまだ“その人”が死んでいないことを物語っていた。
“彼”は“その人”を力無く揺すりながら呟く様に言う。
「おい、起きろよ。こんなトコで寝てんじゃねぇ……」
“その人”は目覚めない。しかし暫く揺すり続けていると、動かなかった瞼がピクピクと動き、ゆっくりと開いていった。
「目ぇ覚めたか…?」
“彼”の声に“その人”は微笑を浮かべた。
「あぁ…。お前、無事だったのか……。良かった…」
安堵の表情の“その人”に“彼”は言う。
「それ以上、喋るな。―立てるか?」
「どこに、連れて行くつもりだ?」
その言葉に“彼”は眉をしかめる。
「医者のもとに決まってんだろ」
「なら、遠慮するよ…」
「っ!? なんで!? 今なら、まだっ…」
「間に合わないからさ」
“彼”の言葉を遮って“その人”は言った。
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