Dendrobium Phalanopsis type
□プロローグ
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「ンなこと…。ンなことまだわかんねぇだろうがっ!!」
「いや、わかる…。これを、見てみろ」
“その人”がゆるゆると上げてみせた右腕には金色のリング型のブレスレット。それを見た“彼”は息をのむ。リングは地面に近い方から、少しづつ消え始めていた。
「こいつは…お前との、契約の証であり…契約主の、寿命も表す。…こいつが消え始めてるって事は……どういう意味か、わかるよな…?」
“彼”は黙り込んだ。
認めたく、なかった。
何かに耐えるように“彼”は強く下唇を噛み締める。
そんな“彼”をみて“その人”は「ハハッ」と弱々しく笑った。
「そんな、顔すると…綺麗な、顔が、台無しだぞ?」
「綺麗なんかじゃ…ない。…もう、血塗れだ……」
“彼”の言葉に“その人”はちょっと瞠目してから、また優しく笑う。
「優しいな。お前は」
「……」
暫くの沈黙。
それから、ふと、“その人”が口を開く。
「なぁ…? 俺の、最後の願い…聞いてくれないか…?」
“彼”はそっぽをむく。
「おい、おい。それは……」
「ないだろ」と言おうとして“その人”は黙り込んだ。
―“彼”が、泣いている事に気づいたからだ。
“その人”はそんな“彼”を温かな目で見つめながら声をかける。
「一方的に、話してもいいか…?」
「ヤダ」
“彼”はぐしっと涙を拭うと、“その人”と向き合った。
「なんだ?」
「…俺の、娘の事だ」
「娘…?」
“その人”は頷く。
「お前に、かかっている、2つの契約。その証の品の1つを…娘に、預けてきた…」
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