Dendrobium Phalanopsis type

□プロローグ
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「預けた…?」

“彼”の表情が一転、険しくなる。その理由は“その人”もわかっていた。

「契約違反、だよな…。わかっている」

 本来、契約主は契約者との契約の証の品が何個になろうと、肌身離さず持っておくのが鉄則だ。なぜなら、それは契約者の力を封じてしまったり、命を脅かす存在になっているからだ。
“彼”の場合もまたしかり。契約による呪縛の所為で本来の姿に戻れず、力も半分以下に押さえられていた。

「わかっているが、お前に、どうしても、頼み、たかった…」

 「娘の事を…」と言うと“その人”は申し訳なさげに目を伏せた。
『あぁ、そうだった』と“彼”は心中で呟く。

『コイツは、こういう奴だったっけ』

 自分の事は後回しにするほど家族思いの、とても優しい…。

「―わかったよ」
「っ…!」

 目を開いた“その人”に“彼”は言う。
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