Dendrobium Phalanopsis type

□プロローグ
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「俺に任せろ。大丈夫。呪縛が1つ解けた俺は…強い」
「…そうか」
「だから……」

“彼”は一瞬黙り込む。
 涙が、溢れてきた。

「だから安心して、眠れ」

 その言葉に“その人”は笑った。幸せそうに、笑った。

「ありがとう…。 ―――クオン…」

 それが“その人”の最期の言葉になった。
 右腕のリングが光となって消えると共に“その人”は息を引き取った。


 暫くの間、“彼”――クオンは“その人”に祈りを捧げていたが、その内立ちあがり、ぐしりと涙を拭った。
 それから身体をふるりと震うと――そこには人ではなく、一匹の獣の姿があった。
 輝きだした朝日に照らされながら、その獣はどこかへと走り去っていった――。
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