Dendrobium Phalanopsis type

□第1章
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 ただでさえ気の弱い私は思わず不安に駆られる。
 必死に不安を抑え込み、口を開く。

「あの……」
「……けた…」

 ?。
 今、この人何か…。

「見つけたッ!!!!」
「っ!!?」

 ふいに上がった大声に驚いて、私はビクッとなった。
 と同時に周りの人の視線が集まっていることも感じ取れる。
 さっきも言ったけど、ただでさえ気の弱い私は早くここから逃げ出したくてたまらなくなった。
 が、そんな私に対して彼の口から驚愕の言葉が零れでた。

「お前が…。お前が俺の主だっ!」

「・・・・・・え?」

 言葉の意味がいまいちよく分からないのは、もう頭が思考停止してしまっているからだろうか。
 そんな私に。

「お前ッ!!!!」

 叫ん…いや、寧ろ吼えて。
 それから彼はガシリと私の肩に掴みかかった。
 突然のことに私は思わず「ひっ!?」と言ってしまう。
 その様子に彼は形のよい眉をギュッと寄せて口を開いた。

「おい、おい…。その態度は…あまりにも……酷いんじゃ………」

 彼の語尾が段々弱くなっていった理由は私でも分かった。

『周りの視線が…』

 痛い…。ぐさぐさ刺さってくる気がする……。
 その視線に彼も耐えられなくなったのだろう。
 「チッ」小さく舌打ちをして「こっち来い!!」と一言、私の腕をぐいっと引っ張った。
 あまりにも強い力で引っ張られた私には拒否権を発動する暇もなく。彼に腕を引かれるままに路地裏へと連れ去られていった。

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