Dream〜SANJI編〜連載
□丘への道
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「じいさんがいつも居るのはどれだい?」
「赤い屋根の家が母家なので、多分、そこに居ると思います。」
「ん…。了解。」
母家の玄関ドアらしき場所に向かうと、彼女は大丈夫だと言って地面へ裸足のまま立ってドアをノックした。
《コンコンッ…!コンコンッ…!》
「おじいちゃ―ん!おじいちゃ―ん!居るぅ?!アタシ!美紀!居たら返事して―!」
彼女、美紀って言うんだァ…。可愛い名だ……。いきなり呼んだら怖がられるかな?取り敢えず美紀さんと、呼べば大丈夫か?
「美紀さん…じいさんは留守かい?」
何度か呼び掛けて居るが、中からは全く応答の気配はなかった。
「ん―――。今日迄カーニバルだから商売に出掛けたのかも知れないな…。」
「あ。そっか……。」
「おじいちゃんの事だから、そんなに働かないだろうし。時期、帰ると思うので、えっと…。あ、御名前?」
「俺ですか?俺はまあ、名乗る程のモンじゃねェけど、サンジです。レディの名は美紀さんで?」
「サンジさんね?ここまで連れて来て貰って有り難う。あ、私。名前言いました?」
「いや……さっき、じいさん呼んでるとき言ってたから。」
「あぁ…。その名は今はおじいちゃん位しか知らないから。今の私は《踊り子のシエル》です。だから、シエルで構いません。」
そう言って今まで目深に被っていたローブのフードを外した。
「………驚いたな。」
今さっきまで抱き上げて走ってたレディは、俺がさっき後ろ姿だけを垣間見たレディだった。
「え?」
俺の一言で逆に驚いた顔を彼女はしていた。
「あ、いや…。さっき、俺の仲間と広場で美紀さんの踊りを見逃してさ。まあ、たまたま着いた街だから仕方無いんだけどね。そん時、後ろ姿だけ見えたんだ。だから、驚いた……。」
「それも、黒スーツの男達から逃げてるし?」
「ああ…。午後も有るんだろ?良いのかい?」
「それは良く無いんだけど……。」
表現が難しいが、大人の綺麗さの中に可愛らしさが交じった素敵な顔をすっかり曇らせてしまっていた。
「ごめん。責めるつもりなんてこれっぽっちも無いんだ。何か訳あり何だろ?俺で良ければ力になるけど…。」
「え?でも…。」
「ま、ついでみたいなもんだ。」
俺は、じいさんを待つ間、彼女から色々な事情をこれから聞くことになった。