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□期限付きの恋人
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「白石ー!」




こちらに気付き大きく手を振る彼女に白石くんも驚いているようだった。




「白石ー!彼女かー?」


忍足君が聞けば、白石君は少しためらって


「まぁなー!」


と答えた。

グラウンドから二人の騒ぐ声が聞こえて、私の心臓も騒ぎだす。




「白石ー!お前達もこれからマクド行かへん?」


「謙也、邪魔しちゃだめだよ」




遠目の彼女が忍足君の口を抑えると、屋上のフェンスがカシャッと音をたてた。


その正体は、白石君。


届かない彼女達に、もどかしそうにフェンスを握りしめている。


それが何を意味しているかはすぐに分かった。

親友とも言える忍足君が彼女である私を知らないのも、あんなに白石君が焦っているのも。




『あの子が好きなんだね?』




目を見開き、私を見つめる彼の瞳が揺れている。

完璧と言われる白石君なのに、嘘つくの下手だよ…

でも、




『それでもいいんだ』


「名字さん…」


『あと二週間は私のものでしょ?』




白石君は何も答えなかった。

沈黙が続くまま、視線だけは彼女へ向かっている。




「お前、黙っとき」


「きゃーやめてよ、謙也!」




忍足君が彼女の髪をクシャクシャに撫でれば、

フェンスがまた大きな音をたてて、白石君が


「ごめん」


そう呟いた。


走り出した白石君の向かう先はきっと彼女のところ。


屋上から見えたふたつの影はみっつになり、

やっぱりな、なんて思えて少しだけ笑えた。






私は白石君の心も、
身体さえも繋ぎ止められていなかったんだ。


泣きたいけど泣かない。

同情だって分かってたじゃない。


それでも私達はまだ

恋人同士なんだから。




約束した、あと二週間。


これ以上、嘘を見破らせないでと願うばかり。


どんなに傷ついても私は傍にいたいと思うから。



叶うなら綺麗な思い出のまま、

あなたとさよならしたい。








おわり
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