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□カレン
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「ほら、名前」
『えっ?』
無意識に俯いていた顔をあげると、目の前には滝君の顔。
滝君の瞳の中には私しかいない。
「名前、笑って?」
『え?えっと…』
「ほら」
戸惑う私を余所に、滝君は私を笑わせようと自分も笑ってみせる。
私、気を遣わせちゃうほど深刻な顔してたんだ…。
ああ、彼のこんな優しさが本当に好き
大好き…。
涙で滲んであまり顔が見れないのは残念だけど、それでも胸はいっぱい。
「名前、泣いてるの?」
『ごめん、なんか嬉しくて』
あまりにも滝君が優しいから泣けちゃうの。
嬉しくて泣いたの、初めてだよ…。
「ごめん。俺の彼女になってから名前にはいつも辛い顔させてるね…」
『ち、違っ…』
「違わない。俺はいつもキミを見ているんだから」
私の両頬をそっと両手で包み、滝君は顔を近付けてくる。
けど、顔は真っすぐ向き合っているのに、何故だか滝君の目が見れない
きっと今もひどく優しく笑ってるに違いなくて、そう思ったら少し悔しくて…。
『ねぇ、滝君は私と一緒にいて楽しい?』
「もちろん楽しいよ」
あっさりと言ってみせる滝君に、私の頭がついていかない
もっとこう、言葉に詰まったりするのかなって思ってたし。
『そんなあっさりと答えるなんて思ってなかった』
つい本音が出てしまう。
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