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□ぽかぽか
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俺の心は
君でいっぱい。



*ぽかぽか*




「寒いぃー」

そう言いながら肩をすぼめて、白い息を吐く名前。




いつの間にか日課になっている放課後デート。

デートって言ってもただ帰るだけだから
特別なことなんてしてあげてなくて


「いっつも俺のこと待っててくれるけど、
寒いんだからたまには早く帰ってもいいんだよ?」


ほんとは、一緒に帰りたいけど
ちょっと大人ぶってみたり。



「だって、一緒にいたいんだもん。
帰りだったら菊ちゃん一人占め出来るし」


ぶぅと頬を膨らませて、マフラーに顔を埋もらせてる様を見たら
嬉しくって、つい"ありがとう"とお礼を言っちゃって


「だから気にしないで」


って逆に釘を刺されてしまう。

ん〜名前の方がやっぱり大人。



付き合って三ヶ月。
ずっと友達だったからその感覚が抜けない二人。

手だってまだ繋げてない。




『英二ならサクッと繋いじゃいそうなのに』
って不二に笑われたけど
名前のこと好きすぎて
どうしたらいいかわかんないんだって…。


いきなり手とか繋いでさ
引かれても嫌だし…。




「う〜〜寒すぎ。
雪降るでしょ、これ」


頭でもんもんと考えてる間にも
名前はさっきからこの調子でずっと寒いって言ってる。


「って、手袋は!?」


はぁーっと息を手に吹き掛けているのを目撃して初めて気づいた。

「…忘れた」



そりゃ寒いよ…。
よくよく見れば防寒対策甘いし。


俺は今、部活後で温かいけどさ。


ん…?

俺は温かくて
名前は寒い。



「菊ちゃん、私手袋忘れたの」


ちょっとした思い付きが浮かんだ瞬間に、
まるで心の声が筒抜けだったんじゃないかってくらい
ベストタイミング。


名前は立ち止まって俺に訴えかけてくる。


「で、手冷たいし、寒いの」



うん。
俺もそう思う。

そう思うんだけどさ、それって…









「……もういい」

なにも言えない俺に愛想を尽かしたのか、
肩を落として再び歩き出す。





あぁ〜
どうしよう!

どうしようって言うか、どうすんの俺!?



けど、けどさ

きっと答えはひとつ。





「名前!!」
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