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□ever
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この均衡を壊したくない。

頭の中に浮かんだのはソレだった。


同時に、あの女に言われたことを思い出す。






名字さんって仁王君のなんなの?






正直に、大事な奴だと答えたらこのザマだ。

しかも恋愛対象という意味ではない。


だが、取り繕う気もなかった。

暇潰しの女に労力を使いたくなかったし、名字をあの女に語るのはもったいないと思ったから。






『タオル、冷やしてこようか?』






それに、守りたかった。

名字とのこの時間を。






「いや、もう平気じゃ」




タオルを頬から離すと、名字は俺の顔をジッと見つめてくる。

それはだんだんと複雑そうな表情になり。






『引っ掻き傷ができてる』


「平気じゃよ」


『仁王…』




突然、名字に右手を掴まれ戸惑ってしまう。

話を促すよう首を傾げれば、悲しそうな声音でポツリと呟いた。




『もっと自分を大事にして…』




真剣な瞳に声。

コイツは今、心から俺を心配してくれてるんじゃろう。


それが嬉しくて。




「ありがとな。名前チャン」


『仁王…』


「次はヘマせんよ」


『私が言ってるのはそういうことじゃなくて』




分かっとる。
分かっとるから。

相手を傷つけて、自分も傷ついて、そういう遊びをやめろと言うんじゃろ?


でもそうしたら、
コイツは俺を心配してくれなくなる。


名字に心配される嬉しさ。

いつでも俺は名字に甘えているんだ。


名字がどこまでも優しいから。






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