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□if
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好きとは言えへんが

誰かのもんになってしまうのは嫌やった。


1年前、告白されて友達という選択肢を選んだのは俺。


名前…

いや、名字は跡部がずっと好きやった相手だから。








【if】








『忍足くーん』


「名字?」




フってしまった後もこうして友達を続けておるのは、
名字の優しさだったのかもしれない。

名字は1年前とだいぶ変わってしまった。


昔は何と言うか…
もう少しおとなしかった気もする。




「ごくろうさん。今日も跡部のお守り?」


『うん。忍足くんは今帰り?部活行かないの?』


「えっ…と今日はちょっと…。跡部には内緒な?」




小首を傾げてみれば、
どうしようかなと名字は笑った。


跡部の名字に対する束縛は
日に日に強くなっている。

だが、付き合っているわけではない。

跡部なりの愛情表現だが、
名字に伝わることがないのが素直に嬉しかった。


この微妙な距離感。

誰のものにもならんといてと心の中で願ってしまう。








『どうしたの?ジッと見て』


「いや…すまんな。さっ、早く跡部んとこ戻ってやり。あいつ心配するやろ?」


『…ふふ』


「ん?」




名字は一歩、また一歩と俺に近付いてくる。

距離が近付くたびに
鼓動が早くなるのを悟られないよう平然を装ってみせた。




『…そういう忍足くんが好きだよ』


「…ありがと?」




よく分からん。

ただ『好き』と言う言葉が頭の中をグルグルと巡っている。




『ふふ』


「趣味悪…からかったん?」




少しだけキツい言い方。

名字は少しだけ目を見開き俺を見つめていた。







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