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□トライアングル
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白石は名前が好きだ。

本人から直接聞いた訳やないがきっと間違いない。


ほんまなら親友の恋っちゅーもんを応援してやりたいが…

名前は俺の彼女で
応援する訳にもいかず、

俺達は複雑な三角関係になりつつある。









【トライアングル】









『…何で白石がいるの?』




そう名前が怒るのも無理はなかった。

今日は前々から約束しとったデートの日。

待ち合わせ場所に行こうとした俺が、
別れて落ち込んどるという白石をつい誘ってしもうたから。






「謙也は優しいなあ、名字さん」


「すまん、名前!白石が元気ないからつい…」


『…白石、それ何人目?そのたびに邪魔して』




今までとの違いに名前もついていけんのやろ。


白石は、
前はそんな奴やなかった。

俺と名前が付き合い始めてから、
人が変わったように女を何人も変えている。

まるで、寂しさを埋めるかのように。






「人数なんて数えてへんよ。付きおうてへんし」


『なにそれ、最低。謙也には悪いこと教えないでよ』


「俺は大丈夫や!」




名前一筋やし!って言葉は飲み込んだ。

なんとなく白石の前でそういうことは言えへん。

白石を見ると、ボーッとした表情で名前を見つめていた。






『謙也』


「ん?」




名前は俺の手を取って、
隣にピッタリとくっつく。




「名前…」


『白石を気にする必要ないよ。今日はデートでしょ?…白石邪魔だけど』


「ハハッ、名字さんきっついわ」


『当たり前でしょ!…今日は謙也に買い物付き合ってもらうの。白石も荷物持ちくらいしなさいよ?』




それは遠回しな名前の白石への肯定の言葉。


言い方はきついが…

白石はめっちゃ嬉しそうに笑ってた。






*






それから向かったのはいかにも女子が好きそうなショップで、
名前が試着室に入ってからもう大分経つ。




「名前ー、まだか?」


『もうちょっと』




小さくため息をつき、
ぼんやりとしている白石に近づけば力なさげに笑ってみせた。







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