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□ふわり
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蓮二の傍はとても心地よくて

片時も離れたくないといつも思う。


でも付き合っているわけではなく、私達はただの幼馴染み。


好きや付き合いたいなんて言葉は何回も言ったけど、
その度に蓮二は、もう少し大人になってからなと頭を撫でてきて。



単純な私は、

『今がしあわせだからそれでいいか…』

なんて思ってるうちに時間は経って、蓮二は他の女の子から告白されるようになっている。

焦りや不安を抱えて過ごす日々もそろそろ限界。








『れんじー会いたいよー』


「名前うるさい」


『どうして私は3Cなんだ!幸村と隣の席なんだー!』


「光栄だろ?」


『ぜんっぜん!私は蓮二と…痛たたたたたっ』




こうやって、気にくわないことがあるとすぐに幸村は頬っぺたをつねってくる。

つねるだけじゃない。
中でもデコピンは目の奥で星が飛び散るほど痛い。

こんな幸村が学校の王子様だなんて、
立海生徒は本当に見る目のない集団だと常々思う。




「今俺の悪口考えてたでしょ?」


『…何で分かったの?』


「お前がバカだからだよ」




あ、デコピンがくる。

思わず目を閉じるけど、
あの言葉にできない痛みが襲うことはなかった。


おかしいと思い、
ゆっくりと目を開けると

私のオデコを守る綺麗な手が見えて、
顔をあげるとそこには




『蓮二!』




私の代わりにデコピンを受けた蓮二の手が赤くなっている。

幸村は絶対に本気でやったに違いない。




「名前よかったね?幼馴染み様の登場だ」


「精市、もう少し手加減してやってくれないか」


「ははは、ごめん。コイツ俺を怒らせたんだ」


『悪役も板についてきたね…』


「名前?」
『ごめんなさい』




幸村から逃げるように私は蓮二の手を引き、廊下へと出ることにした。

幸村がムッとしながら私を見ていたけど、見なかったことにして。








*








『大丈夫?痛くない?幸村のデコピン強烈だから…』


「心配するな。名前はいつもアレを受けているのか?」


『まぁ…たまに』




うそ。
2日に1回のペースだ。




「そうか。あまり精市を怒らせないよう気を付けろよ」




優しく頭に手を置かれ、それだけでニヤけてしまう。

なんて単純なんだ、私。

でも、無意識でやっているその行為が誰か他の人に向いてしまったら…

そんな不安を振りきるように私はいつも通りの表情を作った。






『蓮二が教室まで来るの珍しいね!』


「ああ、話があってな」


『…どうしたの?』




心なしか蓮二の表情が暗い。

あまりいい話じゃないんだろうなと思いながらも、蓮二の言葉を待った。






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