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□Time
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何が起こってるのかいまいちわからなくて


「侑士?」

彼の名前を呼んでみれば


「やっぱ、名前の可愛い顔も見たい」

そんなことをとても優しい目をしながら言うの。



「ほら、俯かんとこっち見?」

そっと頬に触れる手。
そのまま少し顔を上げるようにされれば、侑士の顔が凄く近くて
心臓が壊れるんじゃないかってくらい胸が高鳴って自然と視線をそらしてしまう。


「名前、そっちに俺おらんよ?」


「わ、わかってるけど」

「なら、こっち」


今度は両頬に手を添えられて
完璧に向き合わされてしまった。




「ん、可愛い」


ただでさえ、恥ずかしいのに
こんなこと言われたらどうしたらいいかわからない。



「ゆ、侑士…」

助けを求めたくて
頬に触れる手にそっと自分の手を重ねれば

「……それ、逆効果やで…」



そのまま顔を近づけられ
唇に感じた温もり。



「…ほんま、ズルいなぁ」

離れたと思ったら、クスクス笑ってそんなことを言いながら侑士は私を抱きしめる。


「い、今のは侑士のほうがズルい!!
心の準備とかあるのに…」


反論するように言ってみたものの
やっぱり恥ずかしくて
侑士の背中に手を回して、胸元に顔を埋めたせいで最後のほうは声が小さくなってしまった。



なのにそんないっぱいいっぱいの私の耳に飛び込んできた言葉。


「なら、先に言えばええの?
…もう一回、って」


「え…?」


「もう一回しよ…?」




いいよ。
って言う前に

もう奪われてた―









「あー…幸せやなぁ。」







それはこっちの台詞。


私のほうがずっとずっと幸せだよ。






「このまま時間が止まればええのに…」


そしたら、ずっと一緒におれんのにな

って。
らしくないことを言う彼に

私もそう思う
って抱き締め返せば


自然と笑みが溢れちゃって


もっともっと好きだと思うの。





侑士といれる
この二人だけの瞬間が
かけがえのない時間だよ。


だから

この気持ちが少しでも伝わるように今度は私から口付ければ



嬉しそうな侑士が
お返しと言うには多すぎるくらい
キスをしてくれました。






「ゆ、侑士!ちょっと待って!!」

「無理。待たへん…」

「もう、じゅうぶんっ…」

「名前への想いを伝えるにはもうちょいやな…」






そう、なかなか離してくれなくて
困ってしまうくらいに

この甘い時間は
いつまでも続いたのでした。












*fin
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