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□First Step
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『あ、あの、違うのっ』


「…くくっ」


『え?』




小さく漏れた笑い声に私は眉をひそめる。




『どういうこと?』


「すまんすまん。実はお前さん達が話しているのを聞いてしまってのう」


『まさか…』


「名前達まだキスしてないの?ってな」




ああもう、
誰か助けてください。

まさか聞かれていたなんて。

熱くなった頬を両手で包み込めば、仁王が私の顔を覗きこんできた。




「で、どうしますか?彼女さん」


『どうするって…』


「キス」




私は恥ずかしくて仕方ないのに、仁王は至って普通なのが少し悔しい。




『そんなに直球で聞かないでよ』


「不意打ちでした方がよかったかのう?」


『それはダメ!』




キスを意識したのが最近なのに、不意打ちでキスなんてされたらきっと私は…


もちろん嫌なわけじゃない。
でも、はじめてだし




『心の準備が、したい』


「了解」




横目で見た仁王は特に気にした様子はなくて、それでも少し悪い気がしてしまう。

仁王だって男の子だ。
本当はそういうのしたいって思ってるはず。




『仁王』


「ん?何じゃ」


『き、キスしたい?』


「したい」


『ぶっ!』


「こらこら吹き出すな。名前が聞いたんじゃろ」




だってそんなにストレートに言うとは思わなかったんだよ。

分かってたけどさ。


でも私は
仁王が好きだから。

だから…




『仁王。キス、して?』


「名前…」




仁王に向き合って目を閉じる。

本当は心の準備なんかできてない。

ドキドキするし、
ちょっと怖い。




「俺の彼女さんは本当にアホじゃのう。俺の為に無理しなさんな」


『だって』
「名前」


『は、はい』




仁王の有無も言わさぬ口調に黙りこめば、
彼は困ったように笑い掛ける。






「大事にしたいんじゃ」


『…………うん』






この人を好きになってよかった。

安心して身体の力が抜けた私を自分の肩にもたれかけさせ、

耳元で囁かれたある一言。






「もうすぐ半年の記念日じゃき」


『うん、その時は』






私のファーストキスを

貰ってください。









つづく?
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