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□First Step
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それは何気ない日常の、
何気ない友人の一言。




「名前達、半年も付き合ってるのにまだキスしてないの?」


『え?おかしいかな?』


「おかしいよ!彼氏って仁王君でしょ?」




そう、私の彼氏は仁王。

付き合うまでは手が早いなんて噂を聞いたことがあったけど実際には噂だけで、

私達はまだ手を繋ぐ以上のことはしていない。


でも仁王は私をとても大事にしてくれるし、
私には何の不満もなかったんだけど…








「おー今日も見事な膨れっ面じゃな」




あの友人の一言以来、

私の頭の中はキスでいっぱいで、キスのことばかり考えている。

キスってどういうタイミングで、どういうときにするんだろう。

そもそも経験がないのだから考えても無駄なんだけど。






「ほら」


『きゃっ』




突然首に当たった冷たい感触。

仁王が悪戯っぽい笑みを浮かべながら自販で買った飲み物を持っていて、それを私の手に持たせてきた。




『あ、ありがと』




何にせよ、仁王は私のことに関してはとても敏感だ。

キスについて悩んでいるなんて、絶対に気付かせないようにしなければ。


そう決意したと思えば、




「どうした?考え事か?」




すぐに気付かれてしまうのは仁王だからだと思う。




『何でもないよ!』


「………」


『…仁王?』


「…俺は名前にとって、そんなに頼りない彼氏だったかのう?」




目を伏せて、ポツリと呟く仁王にサッと血の気が引いていくのが分かった。

違う。違うのに。

頭の中を整理して一番適切な言葉を探すけど、
頭の中に浮かぶ言葉は


私達キスしないの?

そろそろキスしてもいいんじゃない?


全部催促みたいじゃん!






『に、仁王、あのね、私…』




うまい言葉は見つからないし、恥ずかしいし、頭の中は真っ白で。




「キス…」


『ぎゃっ!』




まさにピンポイントな言葉に私の身体はビクリと揺れた。

何だか嫌な予感がする。






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