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□嘘つき眠り姫
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貴女の前だと
どうして私はこんなにも
*嘘つき眠り姫*
「名前さん?」
誰もいない教室で居残りをして
、二人で向き合って勉強をしていたはずなのに目の前にいる彼女は、すっかり机にうつ伏せて目を閉じてしまっている。
「…幸せそうな顔をして。
無防備と言いますか…警戒心がないと言いますか…」
やれやれと首をふり、ペンを置き軽く肩を揺すってみる。
本当はこのまま寝させておいてあげたいところですが、下校時刻が迫っているためそうもいかなくて。
「名前さん、帰りましょう?」
もう一度揺らしても
むにゃむにゃという言葉しか返ってこない。
「困りましたね…」
ふと、仁王くんならこういう場合どうするのかなんて、くだらないことが頭を過る。
だけど、彼の言葉で彼女に語りかけるのはなんだか癪で
「……名前。起きないと悪戯しますよ?」
…なんて、言ってから恥ずかしくなってしまった。
寝ていてよかった
と、安堵したのと同時に
「………じゃあ起きない」
そんな小さな声がひとつ。
「…………起きていたんですか」
途端に恥ずかしさが何倍にも込み上げて、なんという発言をしてしまったんだという後悔の念から己の口を片手で覆った。
「……起きてません。寝てます。…ぐぅ」
なのに、こちらの動揺とは裏腹に彼女はばればれな嘘をつく。
一向に目を開けずに、わざとらしい寝息まで立てて。
「…起きてるでしょう」
「………寝てます」
寝ていたら返事なんて出来ないのに…なんて、疑問に思ったけれど
すぐに1つの可能性が浮かんだ。
だけどそれでも確信はなくて
しゃがみこんで、寝たふりをする彼女を見つめて再度尋ねる。
「……本当に悪戯しますよ?」
「…………ぐぅ」
「…寝てたら悪戯できませんが」
「はっ!」
しまった
と言わんばかりに勢いよく顔を上げる彼女。
「…起きてましたね」
「ね、寝てます…むにゃむにゃ」
バレバレな嘘。
だけど、そこまでしても寝たふりをしているということを
私は自惚れてもいいのでしょうか?
「名前…逃げるなら今ですよ?」
最後の忠告と言わんばかりに
貴女に向き合い、顔を近づける。
だけど、彼女は
キュッと唇をつむり
自らも少し顔を上げ
「…寝てるんだってば」
また嘘をついた。