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□嘘つき眠り姫
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「…なら…そろそろ目覚めていただけますか…お姫様?」


そう言って、ゆっくりと顔を近づけ、額にキスをした。





「…違う」

「…聞こえません」


明らかに口をヘの字にし、目を閉じたままの彼女にしらを切る。




「…仁王っぽいこと言ってるからもっと凄いのかと思ってるんですけど」


きっと悪気はない。
仕掛けたのは私。

けれども名前の口から彼の名前が出たのが気に障り

それ以上余計なことを言わないように


「ねぇー、やぎゅ…っ、ん」

彼女の唇を塞いだ。



醜い嫉妬だけれど抑えれなくて
そんな自分が情けなくて
唇を話しても顔を上げれず彼女の額に己の額を合わせたまま。


「柳生、おはよう」

「…おはようございます」


そんな私とは対称的に嬉しそうに微笑んで、今起きたと言わんばかりに普通に話しかけてくるからつられて微笑んでしまう。



「やっぱり私の王子は柳生だった!!」

「王子…?」



「そう!
だから目覚めたんだもん」


「……わかりませんよ?」

「え…?」



立ち上がり、不安げに私を見る彼女の手を引き、腰を抱けば強張る体。



「や、やぎゅ!?」


「貴女を想う男は、王子よりずっと罪深い生き物かもしれないと言ったらどうしますか……」

「な、何言って」


「名前を独占したいと…もっと触れたいといつも思っていると言ったら…?」




貪欲に
貪欲に

貴女が欲しいと
心が求めてる。


だから逃がさないように
逃げてしまわないように
こうやって捕まえて

腕の中に閉じ込めてしまう。


「それは大変…だね」

「ですから」

「私も同じ気持ちなの」




ですから

軽々しくああいうことをしてはいけないと、お説教をするつもりだったのに
貴女はすぐに私の心を掻き乱していく…。



「本当に…手のかかるお姫様ですね」

「でも、好きでしょ?」


「えぇ、大好きです」




首を傾げて尋ねてくる貴女の髪を耳にかけ、再び唇を重ねた。





貴女の前では

紳士の仮面はすぐに剥がされてしまう。


そうして、現れた貪欲な私でさえも受け入れてくれる貴女を


私は絶対に離したりしません。



そう


おとぎ話の王子と姫のように

永遠に一緒にいましょう。




いつだって

貴女の眠りを覚ますのは


私でありますようにー











*fin*
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