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□なけない
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最近、名前に避けられている気がする。


何でも話し合えてたはずなのに、
今じゃそれも遠い昔のことみたいだ。



俺は名前が好きで、
名前も俺のことが好きなのかなぁなんて思ってたのに。

マジ女って分かんねぇ。
俺が何かしたなら言えっての。


名前がいないだけで毎日つまんねぇし、毎日会いたい。

そんな苛立ちを抱えながら過ごしていたある日。








『ブン太、ブン太起きて』


「ん…授業終わった?」


『授業も終わってもう昼休みだよ』


「マジで!」




伏せていた顔を勢いよくあげると、目の前にある顔に驚きの声をあげそうになった。

今まで俺を避けていた、
苛立ちの原因。




「名前」


『おはよう』




何がおはようだっての。

今まで避けてたくせに、
よく何もなかったって顔できるな。

心の中ではそう思っているのに、
嬉しい気持ちが少なからずあるのは惚れた弱味だ。






「なーんか、名前と話すの久々な気ィするんだけど」


『ブンちゃんは寂しかったのかな?』


「んなわけねぇだろ」




顔を背ければ、
それはいつも通りの会話、いつもと何も変わらないはずなのに。

それでも何となく違和感があった。




「名前」
『実は話があるんだけど…』




声を発したのは同時だった。


でも名前の瞳を見た瞬間、

俺の中の何かが危険だと告げる。


聞いてはいけない。

頭の中に響く警告音はだんだん大きくなってくる。






「わ、悪ィ。俺、昼飯買いにいかなきゃなんなくて」


『少しでいいの』


「マジで腹減ってて…」


『ほんの少しだから!』




力強く手を引かれ窓際までやってくると、
甘い香りと共に名前の唇が俺の耳元へと近付いた。






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