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□ただ、君のために
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お前の記憶からどうか

俺を消してほしい―







*ただ、君のために*







「精ちゃん、やっほー!
今日は前回の反省を生かして雑誌を持ってきました!」



その声に唖然としてしまう。

もう来ないと思っていた存在が、いつもと変わらず目の前に現れて、あまりにも普段通りすぎるから。



「名前…どうして来た?」

「精ちゃんに会いたいからに決まってるじゃん」


やだなー、なんて言いながらまたもや定番の位置へと椅子を運び腰掛ける。

そう、俺のベッドの横へと。




「…昨日の話は忘れたのか?」

「忘れてないよ。
だから改善策を考えたの!」



昨日の話。

毎日名前は学校帰りに病室に来てはいろんなことを話してくれた。

だけど、いつの間にか彼女の時間は俺ばかりになってしまい、遊びに行くことさえなくなってしまった日々。
だから、名前を突き放すことにしたのに…。



「精ちゃんが休んでるときはこれで、時間潰すから心配無用だよ!」


キラキラ輝いた瞳で言われれば、一気に力が抜ける。



そうじゃないんだ。

俺は、お前に自由になってほしい。
俺のために時間を使うのではなく
お前のために過ごしてほしいんだ。


気丈に振る舞って、廊下で隠れて泣くならば、俺のことなんて考えなくていいから

お前が辛いなら俺を捨ててくれていい


そんなことさえ、思いながらお前に酷い言葉ばかり伝えた。

潤む瞳に無理に作った笑顔、
傷つけたことくらいすぐにわかっても
引き留めも、追いかけもしなかったのに

なのにどうしてお前は



「でね、勉強も確かに最近疎かで、精ちゃんの言うことももっともだと思ったから専属家庭教師になってください!」



そうやって、俺が必要だとどんなときも言ってくれるんだろう。


「あ、でもちょっとでいいよ!
私の頭がパンクしちゃうから」


本当は俺が疲れるからと考えてるくせに、気をつかわせないように自分を落としてまで

どうして、そばにいてくれるのか…




だけど、そんなことがどうでもよくなってしまうくらい嬉しくて


「俺はスパルタだよ?」


なんて、答えてた。
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