main

□未来と
1ページ/2ページ







あれ…?

身体が一瞬浮いて、
踏みしめた地面に違和感を感じた。


でも、そんなことを考えている時間はない。

私はとにかく急がなくちゃいけない。


どこへ?


それを考えて、
頭は一気に覚醒した。




遅刻する!




氷帝の校舎は広いから、
5分前には校門に着いていないと教室へは間に合わない。

必死に駆けて、
校門に着いたのは7分前。

私はこのピンチを何とか免れることができたらしい。

そう思っていたのも束の間。






「おい」




不機嫌そうな声に振り返れば、
跡部君が腕を組みながらジロリと私を睨み付けていた。




『何で…しょうか』




跡部君と私は同じクラス。

私は高圧的な人が苦手だから極力関わらないようにしてきたけど、
そんな人に刃向かってまで事を荒立てるのはもっと苦手だ。

この作り笑いは自分でもうまく気持ちを隠していると思っていたけど、
跡部君の眉間のシワは一層深くなった。




「遅刻だ。生徒手帳をよこせ」


『え?まだ遅刻じゃない気が…』


「………」


『………』


「……チッ」




小さく聞こえた舌打ちに
私は笑顔を張り付けたまま、一歩後ずさる。


遅刻なんかしていない。

ましてや跡部君に因縁をつけられるようなことはもっとしていない。




「名字名前」


『………はい』


「スカートが短い。ワイシャツのボタンはひとつまでしか開けるな。生徒手帳をよこせ」


『…跡部君って風紀委員だっけ?』


「生徒会長だ」




なるほど。

鞄にしまった生徒手帳を渡せば、ひったくられるようにそれが奪われる。

この学校の生徒手帳には
遅刻の履歴や受けた注意を記載する欄があり、
それを期の最後に担任へ見せる習慣がある。

氷帝特有のおかしな習慣。


ふと時計を見れば残り3分。
もう遅刻は決定したも同然。






『もう行ってもいいかな?』


「制服を直してからな」


『ここで?』


「あぁん?俺様が直々に直してやろうか?」


『い、や、自分で直せるから』




2つ開けていたワイシャツのボタンを閉め、
腰で3回折っていたスカートを1回分だけ元に戻す。

跡部君を見れば、
私の生徒手帳に何かを書き込んでいるようだった。






『直したから行くね』


「……名字」


『はい?』


「スカート」




め、面倒な奴!

渋々2回折りのスカートを全て直すと、
跡部君は納得がいったようで口端をあげながら頷いた。






_
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ