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□ココロに咲く花
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伝えたいことがたくさんあるから







*ココロに咲く花*






「名前先輩…可愛すぎます」

暑さ以上にやられてしまうかと思った。

あんなに拒否され続けたのに、目の前に現れた先輩は浴衣を着ていたから。



「凄く、似合います!
後で写メ撮りましょうね」

テンションが上がる俺と

「やっぱり着てこなきゃよかった…」

下がる先輩。


「絶対そうやって、騒ぐと思ったもん」


そう言って、頬を染めながら俺の視線から逃げるようにそっぽを向いてしまう。


「でも、俺のために着てくれたんですよね?」

だから、逃がさないように隣に並んで手を繋ぎ、顔を覗きこんで尋ねれば
空いてる手で、頬を掴まれた。


怒る素振りを見せつつも、否定はせずに、繋いだ手も離さないから微笑んでしまいそうになるけれど我慢我慢。


そのまま、今日の目的である花火が見れる場所まで向かう。



人混みを抜けた会場も人だらけ。
なんとか、土手側で座る場所を見つけたけれど


「…ごめん。私やっぱり着てこなきゃよかったね」

敷くものを忘れたらしく、名前先輩は肩を落としながら溜め息を吐く。


そんな先輩の手を握って、土手にあぐらをかいて先に座り

「名前先輩の特等席はここです。」

もう片方の手で己の太ももをポンポンと叩いて座るように促す。

もちろん、恥ずかしい!と首を振るのはわかっていたから続けて、立ってると他の人見えませんよ?と言えば

何か言いたげに俺を見ていたが、観念したようにゆっくりと膝の上へと移動してきた。



「キレイ〜!」


花火が打ち上がり始めると先程とはうってかわって夢中で空を見つめる先輩。

いつもよりずっと無邪気で、正直、花火より見いってしまう。

「チョタ、見た今の!?」

こちらを向いて嬉しそうに話すから我慢してた口の緩みが抑えきれなくて


「名前先輩しか見てませんでした」

なんて言ってしまい
案の定、バカじゃないの!
と叱咤された。



バカなんですよ、先輩。

俺はもう、貴女が愛おしすぎて
大切すぎて

大バカ者なんです。

だって、怒られた今でさえ
俺の視界には貴女しか映らない。

花火よりも喜ぶ貴女をずっと見ていたいと思ってしまうんです。



「わぁ!
今の色かわい…チョタ?」

そんなことを思っていたら再び振り返った先輩とバッチリ目があってしまい、怪訝そうな顔をされた。

「先輩越しに見える花火見てました。
花火もキレイでしたけど、先輩も綺麗です」


素直に答えれば、ふいっと前を向き
肩をすぼめて

「…ねぇ、なんでチョタはそんなに軽く言えるの?」


軽く?

「…私はさ、恥ずかしくて全然言えないのに」

ぼそぼそとだんだん小さくなる声。
雑踏に掻き消されてしまいそうなほどだけど、しっかり届いた想い。


「チョタはさ……私のこと……っ!?
ち、チョタ!?み、みんないるよ?」
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