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□無愛想彼氏
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まぁ、いっか。
こんなに心配してもらって、もうじゅうぶ…


「……………俺の心を掻き乱すのはいつだって名前だけだ。
お前に関わらねば、こんな想いをすることは一生なかったかもしれん」


………ん?

「お前のお陰で最近は表情が豊かになったとまで言われる始末だ。
…名前…俺のそばにいてくれてありがとう。
これからも宜しく頼む」


優しい眼差しまで向けてくれる真田に私は思わず自分の頬をつねる。


「何をしている!?」

「痛っ!?痛いけど夢に決まってる!
こんな都合のいい展開うそうそー!」


信じられなくて、痛みはあるのにもう片方の頬も摘まもうとすれば


「っ!名前!!」



その手は真田に捕らえられ
私の顔と体は彼の胸元にしっかりと納められてしまった。



「…馬鹿者」

「だ、だって真田があんなこと!」


瞬間、私を包む腕がさらにきつくなる。


「これでも、まだ夢だと言うのか…」

「……大変申し訳ありませんでした」


あぁ、ほんとにもう
ずるいなぁ。



「……この先、一生、浮わついたことは言わん」

「っ!?ほんとに、ごめん!
あまりにも幸せすぎて夢かと思ったの 〜!!」


「…なら、これも夢だと思っておけ」


緩んだ腕に顔をあげれば
いつもよりずっと近い真田の顔。

そんなわけないと思っても
こんなに近い距離なんて体験したことがなくて

どうしたらいいかわからなくて
彼の名前を再度呼ぼうと口を開きかけたその時、軽くだけど

唇に触れた温もり。



「…俺に移れば治りも早いはずだ
……鞄をとってくる。待っていろ」


放心状態の私に背を向け
赤く染まる耳を隠すように帽子を深くかぶり直し、真田は出ていってしまった。


「……うつすと治るって言うのは風邪だよ、真田ぁ。
…………初キス…じゃん」



あぁ、神様


普段あんなに無愛想だから
時たまでるこのギャップの破壊力がとんでもないです。



戻ってきた彼におんぶで帰ることを強要されて、また一悶着あったとしても

こんな素敵な恋人は
他にはいません。



ほんとに
ズルいくらい
カッコいいんです。


私の彼氏は。





















fin*
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