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□だれより近くで
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特別になりたかったの







*だれより近くで*









「なんか、緊張する‥」


急に出入り禁止を言い渡された仁の部屋。
最近、そっけない気もして片想いの身としては胃が痛む展開。

当たって砕けろと言わんばかりに仁の家に来れば、ちょうど帰ってきた優紀ちゃんが部屋に入れてくれたんだけど…ますます胃が痛い。


その時、玄関の戸が開く音がして何やら揉めてる声と近づく荒々しい足音。




「テメェ…」

ドアが開き、睨みを聞かせているだろう声が背後から聞こえる。

「お、お帰り!
お邪魔してまーす」


えへへ
なんて仁のほうに振り返り、笑ってみてもまったくつられて笑ってはくれない。




「入るなって言っただろうが」

「だって、納得いかないんだもん!
理由教えてよ!」


見る限り部屋が汚いわけでも
怪しいものを隠してる雰囲気もない。


だからよけいに不安になる。
千石が言ってた
"亜久津の好きな人"が関係してるのか。


「理由なんかどうでもいいだろうが!
さっさと帰れ!」

「やだ!
この部屋で二人で過ごすの好きなんだもん!!」


昔から入り浸ってた。
幼なじみだから仁が怖いなんて一回も思ったことなくて
むしろ、乱暴口調でも優しいとこが大好きで
なんだって仁のことはわかっているつもりだったんだ。


「…チッ。
ほんとウゼェ」






だから知らない。

こんな風に片手で額を抱え
ほんとにダルそうに呟く仁なんて



そこまで距離があったなんて思いたくないのに

そこまで嫌がられてたなんて

楽しかったのは私だけだなんて
信じたくないのに

「……名前いいか、俺は」


「わかった!帰る!ごめんね、ウザくて!!」


それ以上聞きたくなくて、部屋を飛び出した。



当たって砕ける前に
当たることさえ出来ないなんて



「っ…仁のバカ……」


私のバカ。

あんな別れかたしたら次どんな顔をしたらいいかわからないじゃん。


「もう最悪……」

「あれれ〜?
名前ちゃん?」
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