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□息もできないくらい
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「そのぐらい、名前が大切だと何回も言っていただろう?」



いつの間にか目の前まで来ていた貴方。
逃げるように後ろに足を下げたけど
そこはもう柵で


「ずっと一緒だと言ってくれたのは、名前のほうが先だと思ったんだけど……」


寂しげな瞳。
私の頬に触れた手はとても冷たくて


もうそんな顔はさせないと
貴方の手は私がずっと温めると
あの無機質な病室で誓ったのに


「ごめ……ん、なさぃ…っ…」


今度は私がさせてしまった。
涙が溢れて止まらない。

「いいんだよ」


ゆっくりと包まれる体。
彼の匂いが心地よくて、すがるように背中に手を回す。


「…ちゃんと迎えに行くから」


あぁ。
彼は知ってるんだと悟った。

私が他県に引っ越すことを……。


「名前が不安にならないように連絡もちゃんとする。
休みだって全部会いに行くから」


だから、俺を一人にしないでくれ




そう、小さな声が耳に響く。






貴方と離れるくらいなら
貴方と過ごせなくなるなら
終わりが来る前に
時を止めてしまいたかった。

幸せなままで
貴方に愛されたままで
終わらせたかった。


だけど、この先どうなるかわからなくても
やっぱり貴方といたい。



「…私も会いに来るから。
だから…だから」

「あぁ…。
離れていても、会えなくても俺の気持ちは変わらない。
名前のことが好きだよ」


「精市……。
私も、私も大好き」


命を捨ててまでもいいと思ったくらい



「3年経ったら拐いに行くからちゃんと待っているんだよ。
そしたら……俺と結婚してください」



「っ…もちろん!」






きっと同じ気持ちなら大丈夫。


そう約束してくれた彼のため
この時間が、関係が終わらないように
私はこの先も彼と生きていこうと誓いました。


そう息もできないくらい
愛してる貴方を
もう二度と悲しませないためにも

















fin*
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