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□息もできないくらい
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このまま時間が止まらないなら
いっそ






*息もできないくらい*










「人が豆粒みたい……」

放課後、こっそり屋上に忍び込み柵に手を乗せて呟く。



「…………このまま飛び降りたら」


「この高さでも下は茂みだから怪我するだけだろうね」


その声のするほうに勢いよく顔を向ければ、部活中のはずの精市が立っていた。


「さっき、様子がおかしかったから気になってきてみれば……何を物騒なことを考えているんだい?」

危ないからと手を差し伸べてくれる彼に私は首を振る。



「……精市のそういう優しいとこ、気づいてくれるところすごい好き。」


むしろ、意地悪いところも
ちょっと怖いところも
全部好き。


「なら尚更こっちにおいで?」



でもね
好きだから行けない。

好きだからこれ以上貴方に触れられないの。


だけど何も言葉が出てこない。
動こうとも語ろうともしない私に
精市はこう言った。



「……もし、どうしてもと言うなら俺は止めない」


予想外の言葉に息が詰まる。
あぁ…止めないでほしいと思ったくせに
引き留めてくれないことに視界が滲んでいくなんて、ほんとに勝手だな。


泣くのを堪えて、彼に今までの感謝を述べようと背筋を伸ばすけど、先に口を開いたのは彼だった。



「だけど、そのあと俺も後を追い掛けるから、ちゃんと向こうで待っているんだよ」


…………今、なんて言った?



私が信じられないと言った顔をすれば
精市はゆっくりとこちらに近づいて


「俺を支えてくれたのは名前だ。
だから名前がいないなら、意味がない。」

そんなことを言ってくれる。


「でも…だけど!
大会だって控えてるのに…」


「名前の応援が俺の何よりの力なんだ。
それがないなら俺はきっとみんなの足を引っ張る」

「う、嘘!
そんなことない!そんなことないよ!
精市は私なんかいなくたって」


私なんかいなくたって
いつだって強くて
誰をも惹き付ける。

誰もが貴方を求めてる。
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