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□愛し君に
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愛しい君に
俺ができること。
*愛し君に*
「あ"ー!
なんでこうなるのかなぁ!」
今、部室で日誌をつけているマネージャーもとい、俺の彼女はさっきからずっとこの調子。
「うんうん。
怒った顔もいいけど、名前は笑った方がもーっと可愛いと思うけどなぁ」
向かい合って座る俺はニコニコと微笑みを浮かべるけど
「誰のせいだと思ってるの!」
返ってきたのは、手厳しい言葉のみ。
「うちの部だって、個々の能力は高いのに地味’Sにサボり魔にチャラ男ってほうが目立っちゃってるなんて悲劇よ、悲劇!」
んんん?
チャラ男って俺?
「うちの部の癒しはもう壇くんしかいないわ……」
ガクッと肩を落とし、項垂れる名前。
「癒しならここにもいるじゃん」
ほらっと、両手を広げるも
目を細められ、大きなため息だけでこちらに来てくれる気配はない。
「この前テレビでやってたんだよ?
ハグすると、ストレスが減るって!」
だから、存分にどーぞ!
なんて招いてみても
「……セクハラ 」
「いやいや、彼氏でしょーが俺」
「この前後輩ちゃんにも似たようなことしてたでしょ」
ギクリ。
まさか見られていたとは……。
「あれは、今のを教えてあげただけだよ」
「どーだか。」
とうとうそっぽを向かれてしまった。
「……名前。
俺は君が一番大好きだよ」
どこか悲しげに目を伏せるから
机においてあった彼女の手を握れば
「じゃあ二番、三番は?」
えーっと……うん。
怒ってるね、これは。
「私は、キヨがみんなに優しくするたび不安になるよ。
ついでに心の狭い嫌な女って自分も嫌になる」
「名前…」
思わず立ち上がって、彼女のそばへと歩み寄る。
「ねぇ、キヨ…もし
「俺ね、ほんとは独占欲強いんだよ?」
次に何を言われるのかが何となくわかって、それを聞きたくなくて抱きしめながら
ずっと隠していた本心を伝える。
「名前だけになったら、俺…きっと逃がしてあげられない」
泣かしてしまったとしても
辛い思いをしたとしても
俺を好きじゃなくなったとしても
手離せない。
「そんなの……怖いでしょ?」
君の自由を奪ってしまうほどの愛情なんて重苦しいだけ。