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□kiss
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「…に、仁王」


救いの視線を投げ掛けても



「まだ、残ってる場所があるじゃろ??」


こんな調子。



わかってる。

唇が残ってるって言いたいことぐらい。


でもムリ。
絶対ムリ!!



だから


「……仁王!
ここ、わかんないの!
でも、自分からは出来ないから、仁王からして!」


顔から火が出るとはまさにこのことだと思う。

仁王も私の言葉に驚いてたけど、すぐに不敵に微笑んで私の耳元で




「目、つぶりんしゃい」


なんて、さっきのお返しとばかりに言うからキスなんていつもしてるのに、宣言するってことが、こんなに恥ずかしいものなんだって思い知らされる。



大きく息を吸って、緊張しすぎて息まで止めてしまったけど、そのまま目を閉じて出方を待てば




"パシャ"


「へっ??」


予想もしなかったその音に間の抜けた声が出てしまう。


目を開ければ、仁王の手には携帯。



「な!
なにやって!!」


「名前の可愛いキス顔ゲットじゃな」


言葉にならない私を余所に仁王は嬉しそうに携帯をいじり


「じゃあ、本番な…」



今度は私が目を閉じる前に後頭部に手を回され、引き寄せられてしまう。


ちょっと待ってなんて制止の言葉が出ないくらいあっという間で


意識する前に唇に伝わる温もりと、いまだに慣れない息苦しさ。



そして再び、聞こえるシャッター音。


でも、すぐには解放してくれなくて離れた頃には息が上がっている私。



でも!

「ふいうちやめてって言ってるのに!」


また大きく息を吸ってキッと睨み付ける。


「そろそろあの2ショットにも飽きたからの」


指差されるのは私があげたハートの写真たて。


その中に入っているのは見覚えのあるもの。


「あー!
あれ!消してって言ったやつ!」

「そんなこと言ったか??」

「言いましたー!」

「安心しんしゃい。
次からは名前のキス顔と二人のキス写真を週替わりに飾るき」


「やめてー!
悪趣味すぎる!」


「どんな表情でも、名前は可愛いんじゃから問題なか」




そのまま、またイイコイイコと撫でられてしまうとたくさん文句が言いたいのに何も言えなくなるのが腹立たしい。



……仁王にじゃなく、自分にだけど。







二枚も三枚も上手な詐欺師。


そんな彼に
いつだって私は
翻弄されてばかりなんだ。













fin*
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