main

□Last Day
1ページ/1ページ

俺に残された時間は


今日で最後



†Last Day†




「名前先輩!!」


探し回って息が上がってても

どんどん前へと進むアンタを引き留めたくて

名前を呼べば

「おー!
赤也!」


いつもみたいな笑顔で振り向いて
いつものように名前を呼んでくれる。

それだけで、目頭が熱くなるけど
仕方ねぇじゃん。

だって今日は


「……卒業、おめでとうございます」

「ありがとう!」


別れの日だから。


「私みたいな、うるさいマネがいなくなったら赤也は嬉しいでしょー?」


ふふって笑うその顔

いつもおせっかいで
子供扱いばっかしてきて
女らしさなんてまったくないのに

それでも俺はいつも
名前先輩の姿を追っていた。

目が離せなかったんだよ。


「止めてくれる人いなくなるんだから、暴走はほどほどにね」


心配する表情も
優しい声も
いつもそばにあって

なのに……
これからはないなんて頭が狂いそうで


「好きだ!!」

ずっと言いたかった言葉は
声に出したら
バカみたいにでかくて

一瞬周りがシン…となったけどそんなの気にしてらんねぇ。


「俺、名前先輩が好きだ。
だから、そんな最後みたいな言い方すんなよ!」

あぁ
ガキくせぇ。

ただでさえこの一年の差がどうしたって埋まらないのに
こんな幼稚な台詞しか出てこねぇとか
マジねぇわ。

けど

「…名前先輩と、ずっと……
この先も一緒にいたいっス。
…………離れたくねぇんだよ」

すぐ追い付くから。
先輩を護れる男になるから

だから

「俺と付き合ってください!!」

勢いよく頭を下げて目をつぶったまま手を差し出した。

「赤也…言うの遅いよ!」


…………ハハッ。
やっぱ、こんなガキじゃ無理か。


「そーっすよね。
名前先輩なら、他にいくらでも」
「ストーップ!!」


今度は先輩のデカい声が俺の声を遮って

「そうじゃなくて。
もっと早く言ってくれたら、同じ制服でデートできたのにってこと」

デート?


「私も好きよ。
でも、女の子扱い一切されないから、自信なくて言えなかったの」


そう言いながら俺の手を掴むとはにかんで

「よろしくお願いします」


最高に可愛い笑顔で頷いてくれたんだ。




今日で最後だと思った。

もう会えないんだと
覚悟もした。

なのに、信じられるかよ?

今俺の手は先輩の温もりを感じてる。



「名前先輩!
大好きっス!
マジで!!
誰にも渡さねぇから!」

「私も大好きだよ!
……でも、まだこういうのは早ーい!!」


抱きつこうとした俺の額を手のひらで押して静止してきた先輩。

そのいたずらっ子のような表情さえ愛しくて

「じゃあ、手だけ」


もっと触れたいけど今は我慢してやるよ。

だって俺にはまだ時間ができたから。


そう

やっと追い付けた。


やっと

アンタを手に入れられたんだ。







fin*

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ