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□lesson
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心臓がいくつあっても足りないくらい


私は貴方にときめいてしまうの



*lesson*




「……っ、景吾!苦しいー!」


ハァハァと息を切らしつつ、抱きしめられていた手から離れるように彼の胸板を押し返す。


酸素!酸素!


思い切り吸い込めた新鮮な空気に安堵していたら


「名前…まだそんなに経ってないだろうが」



不服そうな王子様の声。



同時に

離さないと言わんばかりに再び腕にグッと力を込めて、私の体をいとも簡単に己の方へと引き寄せた。



「いや、時間じゃなくてさ……その…やっぱり恥ずかしいよ!」



ピッタリとくっつけられてしまった体に

離れることを観念し、彼の胸元に体を預けるも紡ぐ言葉はたどたどしくなってしまう。


なぜなら


今、私たちはディープキスの練習をしてるんです……。


付き合うのが初めてな私には、普通のキスでさえ心臓も頭もパンクしそうになるのに

この前、ふいに侵入してきた柔らかい触感に慌てふためいたら


慣れるために定期的に、練習することになっちゃったという……。

しかも!

景吾の部屋のベッドの上で練習しなきゃいけないから余計にパニックになる!


「ほら、続きすんぞ」


そんなこともお構い無しに景吾は私の顎を持ち上げて

またも綺麗な顔が近くなった。

抱きしめられるだけで、だいぶ満足なのになぁ。


「跡部先生、なんかこう恥ずかしくならないようなコツとかないですかね??」

自分で考えても思いつかず、控えめに胸元で手を挙げて訪ねてみた。


「あん?
お前が慣れればいいだけだろうよ。」


ですよねー。

そうだとは思ったけど、そんな即答されるとは…。


「だいたい、こんだけ練習してたら俺様の顔だって見慣れるだろうが」


困り顔をしていたのに

グッと顔を近づけられて、目を見つめられたら一気に顔が高揚するのがわかる。


こんな綺麗な顔に見つめられたら、恥ずかしくてたまらないってば!!


「……景吾のこと、すごく好きだから慣れないんだよぉ」


だから

泣きにも近い訴えをしたつもりだった。


でも


「知ってるか?
そういう発言も、表情も全部煽ってるってこと」

彼にはそんな風には見えなかったらしく

煽るという言葉に慌てて否定すれば

「煽ってなんか……っん!?」


もう、最後までは言わせてもらえなかった。



触れるだけのキス。

そして、くちびるを割って入ってくる柔らかいもの。


ギュッと歯を噛み締めて侵入を拒むと、私を抱きしめている手にも力が入って

息苦しさから口を開けようとしたら


もう負け。


間髪入れずに入ってくる温もりと甘さに頭がクラクラしてくる。



「ふっ、……ん」


角度を変えながら何度も貪られて

体の芯が熱くなるのがわかって


なんだか怖い。


だから景吾にギュッとしがみつけば
ゆっくりと唇が離れた。


「なかなか頑張ったじゃねぇか。」


ようやく解放されて腰が抜けたように少し屈む私の頭を満足気にポンポンと撫でてくる。


その優しい声にドキドキしながらも恥ずかしくて顔をあげられない。


あれで合っていたのか
問題なかったのか

そもそも正解はどれなのかわからないから反応に困ってしまうんだ。



そんな私を見かねてか

彼は私の両頬を手で包み込み目が合うように顔を挙げさせて


「お前とこうしてると、時間なんて忘れちまう。
だから、ずっとそばにいろよ」


反則的な微笑みを向けてくる。


もうなんか

なんかもうさ!


「景吾!」


さっきまでヘタレていたのに、勢いに任せて彼を逆に押し倒す。


「わ、私、ダメダメだけど、頑張るから!
景吾の安らげる場所になるから、だから……お、御手柔らかにお願いします……」


最初こそ勢いよく言えたものの

思い返すとものすごい格好に気づいて一気にしどろもどろになり

最後は彼の胸元に突っ伏してごまかした。


「ほんと、お前は何しでかすかわかんねぇな。
さっきまで、慌てふためいてたくせに、俺様を押し倒すなんていい度胸じゃねぇか」


ククッと楽しそうな笑い声にちょっとだけ安心したんだ。


引かれてないんだってわかったから。


「じゃあ、お、降りるね!
重くて、ごめん!」


そそくさと降りようとすれば

「誰がいいって言ったんだよ?」



再び掴まれる腕に冷や汗が出そう。


「乗ったからには、きちんと責任とって相手してくれるんだろうな?
なぁ、名前ちゃんよ」


そんな悪魔のような微笑みでさえカッコイイと思ってしまう私は

きっと恋愛末期だ。




彼といると
ドキドキしっぱなしで

甘い言葉や
意地悪なセリフの数々に

耳にタコが出来そうなのに


彼はまったく許してくれなくて

心臓はいつも悲鳴をあげてしまう。



でも絶対にいつか

このドキドキを乗り越えられたら


貴方をドキドキさせてやるんだから。




だから

それまでは


初心者向けコースでお願いします…!














fin*

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