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□Sweet Room
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*Sweet Room*





三年の夏。

二泊三日の合宿旅行は、跡部家御用達の場所のためお手伝いさんもいるし、マネージャーの私が行く必要はないと思ったのに強制参加だった。


バスの席でもめた時点で、めんどくさいことにはなるとは思ったけれど


「よし名前!
お前は俺様とスイートルームだ。
他の奴等は別館で雑魚寝でもしてな!」


正直これは予想不可能。


「はぁ?何馬鹿なこと言ってんだよ、跡部」

「そうだ!そうだ!
跡部だけ名前と一緒なんてずりぃじゃんか!」

呆然としている私とは逆に、間髪いれずに宍戸とがっくんがツッコミを入れてくれて、物凄く救われたのは言うまでもない。


「そうですよね。
名前先輩にだけ使ってもらって、あとはみなさん一緒にしましょう。
あ!俺は不審者が現れないように先輩の部屋の前で寝るので大丈夫です」


「いや、お前じゃ頼りにならない。
ここは古武術を身に付けている俺がその任務を引き受けてやるよ」

せっかく安堵感に包まれたのに、この後輩コンビは何を言っているのかな?


「アホやなぁ。
窓から侵入されたらどうするん?
やっぱりここは俺が添い寝するんが1番ええやんなぁ?」


思考が追い付く前に、音もなくいつの間にか隣に立ち肩を抱いてきた忍足に思わず悲鳴を浴びせるとこだった。


肩、勝手に抱くな!


「添い寝!?
名前に何しようとしてんだよ!
指一本も触らせねぇ!」

「忍足さん、やっぱりあんただけはここで潰す」

「名前!
侑士の魔の手からは俺が守ってやるからな!」

ツンデレ3人衆が珍しくツンツンしてない!!

日吉に至っては違う人の台詞のような…

なんて感動と困惑していたのもつかの間


「ばーか。
名前はもう俺様のものなんだよ。
お前らの付け入る隙なんざ、最初からないんだぜ?」


デジャヴを感じる後ろから伸びてきた手と、背中に広がる温もりに跡部にまた引き寄せられたのがすぐにわかった。


あー、やっぱり来なきゃよかったよー!


そんな殺伐とした空気の中


「いっそ、枕投げして決めるってのは!?
それなら公平じゃん♪」

とんでもない提案をしたのはじろちゃんだった。


枕投げは確かに定番だけど、殺気だってやるものじゃなくない?


「なかなかいいこと言うじゃねぇか。
よし!
お前ら大広間に移動だ!」


なんてダメージを食らっていたらまさかのノリノリな跡部の発言にさらに眩暈がしそう。

お正月に奮発して1000円入れたのに全然平穏じゃないんですが神様…。

悲しむ暇もないまま、みんなも口々にやる気を見せていてさっそく勝負が開始された。



「てめぇらじゃ、名前のことは幸せにできねぇよ!」

「金だけが幸せやないやんな。
名前に安心感を与えられるのは俺の方やろ」

「お前らはいつも困らせてるだけだろ!
好きな女にそんな思いさせるなんて激ださだぜ!!」

「先輩方じゃ、名前先輩の本当の笑顔は引き出せませんよ。
俺は過去未来永劫先輩と結ばれる運命なので諦めてください」

「はぁ!?
お前ら全員クソクソ!
名前を癒せるのは俺だけだろ!」

「今こそ下克上のチャンス。
俺の想いの強さは誰にも負けませんよ」


なんの闘いなのかとツッコむ気力もわかないまま、各々の熱い思いが部屋に響き渡る。


樺地がちゃんと審判をしてくれてるのに!

みんなキャッチしちゃうから誰も脱落しないし…。


「ちょっと、トイレ行ってくる」

悲しいかな、ヒロインであるはずの私の初めての発言がトイレ…。


だけどこれは作戦。

一人じゃ危ないと言う面々を

「眠いから早く勝敗決めてほしいな」

と、キャラじゃないような可愛さを振り絞ってみたら、みんなのやる気メーターが振りきったようで無事に抜け出せた。


優勝者と入れるようにとスイートルームの鍵をもらっていたから一足お先に部屋に入りしっかり施錠。


「はー、疲れた」

思いっきりベッドに横になるとなんだか変な感触…


まさか!


「……まぶしー」

明かりをつけて布団をめくれば、じろちゃんが寝ていた。

みんな、ライバルが減った!と気にしていなかったけどまさかこことは。


「もー、じろちゃん。
いつの間にここに入ったの?」

「跡部が鍵を閉める前!」


自信満々に答えられてしまうから、許しちゃうんだよなぁ。

ふわふわな髪の毛に無邪気な笑顔まで見せられたら怒れない。


「仕方ないなぁ。
ここで寝てもいいけど、端と端ね」


幸いにも、何人用のベッドですか!?と言いたくなるほどの大きさだから距離はある。

今、大広間に行かれたら私がいないのバレちゃうし。

だから、これが最善だと思った。


「いいの?
俺も、男だよ?」


途端に手首に広がる温もりと、天井との間に現れたじろちゃんの顔。

押し倒されたんだってわかるのに、数秒もかからなかった。


「今なら俺が名前を独占出来るよね?」


いつもとは違う知らない顔。

いつもより強い力。

見たことがないくらい近い顔に鼓動が高くなる。

だけど


「できませーん!!!」

顔が近かったから顎に頭突きをおもいっきりお見舞いしてあげた。


「もー!
じろちゃんがそんなこと言うなら、私床に寝るからね!」

「えー!?
嘘嘘!なにもしないから!」

氷帝マネも三年もやれば逞しくなるもので

いつの間にか反撃方法も身についた。
だからこれくらいなんとでもできる。


必死に謝るじろちゃんが可愛いから、いーよって言えばまたも可愛い満面の笑み。

「おやすみー!」

と言って二人で眠りについた。


本当ならこういう部屋には、大好きな人と二人でくっつきながら手を繋いで

いろんなことを話ながら笑って、甘い時間を満喫して眠りにつく。
そんな、素敵な夜を過ごすために泊まりたかったなぁ。

次泊まるときには、大好きな人に抱き締められすぎて苦しいよー!って言えますように。







次の日の朝


「う…く、苦しい」



目が覚めたら私を囲むようにR陣が寝ていただけじゃなく跡部、忍足、じろちゃんに抱き締められていることに気付き

悲鳴をあげることになったのも予想不可能だった。



スペアキー恐るべし。








fin*

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