短編

□ずるい。
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「うっ,ぐすっ…ふぇ…」


俺の幼馴染が泣いてる。

好きなやつに振られたって、


しかも好きなやつがよりによって一樹なわけで。

小さい頃からずっと一緒でずっと好きだった。

「好きな人がいるの。」

この言葉を聞いたときどれだけ絶望したか。

「今日一樹くんに声かけられちゃった!」

幸せそうに話すお前の姿を見てどれだけ傷ついたか。


人一倍気が強くて元気で。

小さい頃から泣くこと何てなかったから,

とても辛いんだろう。

好きなやつが目の前で泣いてるのに

何もしてやれない俺は何て無力。


でも失恋したって聞いてちょっとホッとしてしまった自分は最低だと思う。

付け入る隙がなかったから。

今慰めて抱きしめたら一樹のこと忘れてくれる?

俺のこと好きになってくれる?

それとも最低って言って嫌われる?


嫌われてもいい。何言われたっていい。

今しかない。


「名前」

「………なに」

真っ赤な目。

「お前のこと,一樹より俺のほうがよく分かってる。

誕生日も好きな物も今欲しい物も全部。」

「…………」

「……俺にしとけよ」

「ゆうちゃ……」


ぎゅ


名前は俺に抱きつきひたすら泣いた。

俺は名前が泣き止むまで背中をさする。





失恋してる女に付け込むなんて、




本当に俺はずるい。




END_


⇒あとがき







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