亀の生活
□お題2
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「直してくれないか?」
そう言って差し出してきたのは古いくまのぬいぐるみ。かれこれ10年以上の付き合いであるそれは、年代物と言っても過言ではない程に古ぼけていた
「…何処を?」
「目。取れてしまったんだ」
これ、と塗装の剥げたプラスチックのボタンみたいなヤツを差し出す。取り敢えず、ぬいぐるみと目玉を受け取るが、ぬいぐるみ自体既にぼろぼろであちこちが解れている
「もう限界じゃねぇのか?」
「そんなことはない。まだ飾れる」
「一緒に寝てんだろ…」
そんなことは…と呟く言葉は小さくなり、僅かに顔を赤らめている。いつもベッドに鎮座しているこのぬいぐるみは、昔、師で父であるスプリンターから貰ったものだ。本当は兄弟全員が貰ったのだが、今ではレオナルドしか持っていない。物持ちがいいのか、他の兄弟たちの扱いが酷すぎたのか…
「…仕方ねぇな…夜までに直しといてやるよ」
「すまない…」
兄弟の中でも裁縫が得意なラファエロは、預かったぬいぐるみとボタンを持って立ち上がる。そのまま自室に戻ろうとしたが、その前にとリビングの隅に置いてあった救急箱から絆創膏を取り出した
「ほら」
「…え?」
「替えとけ。血が滲んでる」
「あ…」
レオナルドの指先には既に絆創膏が貼ってあったがその何枚かに血が滲んでいた。指先は些細な傷でも出血しやすい
「針で刺す前に頼めよ」
恐らく自分で直そうとしたのだろう。慣れない裁縫で悪戦苦闘していたレオナルドの姿を想像し笑いが込み上げる
「わ、笑うな!!」
肩を揺らすラファエロの様子に笑われたことが直ぐに分かり、顔を赤らめたまま反論してきた
「はいはい」
また後でな、と告げラファエロはぬいぐるみとともに自室へと戻って行った