亀の生活
□変わらない日常(ニック)
1ページ/1ページ
スプリンターは愛用の杖をつき、リビングを見渡す
息子である4匹の亀たちが今日も元気に走り回っていた
「マイキー‼︎また俺のピザ食っただろ!」
「えー?何のことか僕わかんなーい」
次男と四男は恒例の追いかけっこを始め
「二人とも静かにしろ!ライアンの声が聞こえないだろ!」
長男はお気に入りのアニメを見るために一台しかないテレビの前に陣取る
「やぁ、エイプリル。あの、今から時間あるかな?」
三男は好いた少女に懸命のアプローチ中。どうやら断られたようだ
元々元気いっぱいの子たちではあったが、外に出るようになってからはより活発になったように思える
まだ彼等は15歳。遊び盛りで好奇心旺盛な年頃だ。仕方ないと言えば仕方ないのだが
次男と四男が走って行った方向で大きな音がした。と同時に四男の間抜けな声。どうやら次男に捕まり投げられたようだ。逃げ込んだ先が道場だったようで、怪我はしてないだろう
「あーもう‼︎」
アニメに集中出来ない長男が道場へと向かう。途中、少女に振られた三男の腕を引っ張っていく
リビングは静かになったが、今度は道場が賑やかになる。時計を見れば丁度午後の修行の時間だ
スプリンターはゆっくりとした歩調で歩いて行くと、兄弟が仲良く正座をして待っていた
次男と四男に擦り傷が出来ているが、他の二人も少し擦り傷がある
仲がいいものだと口元に自然と笑みが浮かぶ
この修行が終われば、また恒例となっているパトロールに行くのだろう
何ら変わらない日常。これがずっと続いてくれればいいと、願わずにはいられない
けれどそれがもう叶わないということは理解している。この兄弟たちも分かっているだろう
だからこそ、今のこの時間がとても愛しい
「さぁ、息子たちよ。修行を始めるぞ」
元気な声が今日も響き渡る