鬼灯

□地獄大一番/シロ、日々勉強
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「閻魔大王っ!!阿鼻地獄の川が氾濫していますっ」
「天国から要請書が…」
「黒縄地獄は財政破綻しそうですっ」
「大王ーっ!また亡者がドッと…」
「うわーっ今一杯だよっ!!」

今日も地獄は大忙し

「アレ…そういえば鬼灯様は…」
「視察にいってるよ。この忙しさでさァ、彼もあっちこっち引っ張りだこだよ」



ーーーーーーー



「針山は特に問題なし。不喜処はどうですか?」

若い獄卒と視察に来ているのは一本角の鬼神・鬼灯だ

「鬼灯様ァー。天国の桃源郷から人材貸し出しの要請が…」

それから新卒の唐瓜が鬼灯のもとへ走ってきた

「天国の世話までしてられませんよ。どうせあのアホが面倒だからって私に相談しろとでも言ったんでしょう。…桃源郷ですか…まぁ、よくも罪人もいないのにヌケヌケと…」
「旅行けばぁーのーんびりぃぃぃーホテルみかぁぁ●きぃぃぃー」

3人がたちどまっているところに着物を来た白髪で二本角の鬼が一人でホテル三●月のCMソングを暢気に歌いながら歩いてきた

「あれー?ここどこだろ…。ねーねーお兄さん達、ここどこですか?」

どうやら迷子

「ここは…あれ?焔?」

唐瓜は焔と顔見知りだ

「あ、唐瓜ー!!久しぶりだねぇー」

迷子になっていた焔は唐瓜を見るなり安堵したように顔を綻ばせる

「唐瓜さん、お知り合いですか?」

それを見て鬼灯が問う

「こいつは俺と茄子の同期で一緒に働き出す筈だったんですけど、就職決まって受かれて天国に遊びに行ったら雲を踏み外して現世まで落ちて骨折やら何やらで遅くなったんです」
「鬼火の焔です。以後お見知り置きを」

焔は焔と獄卒に一礼する

「お前仕事何すんだ?」
「わからないのー。八大地獄なのは分かってるんだけど…」
「後であのアホにでも聞きましょう。…で、桃子農家への人材貸し出しですか?桃の木はこれ以上いりません。そもそも仙桃を大量に作って妙薬を確保しようという天国の政策には反対なんですよ」
「でも、とにかく芝刈りだけでも手伝ってほしいと…」
「鬼灯様ァァァァァァ!!」

そこへ白い甚平を着たタレ目の獄卒・茄子が急いだ様子で鬼灯のもとへ走ってきた

「どうしました?」
「スミマセンッ!ちょっとトラブルが…。桃太郎というのが来て…」
「桃が来た?いりません」
「桃ー?食べたーい!」

鬼灯が淡々と答えると焔は明るい声でそう言った

「あ…いや…あの別にお中元とかじゃないんですけど…って焔!?」

突然の焔の声に茄子は驚く

「久しぶりだねぇ、茄子!元気してた?桃は?」
「元気だよー!…桃じゃなくて桃太郎だよっ!とにかく来てください!」

茄子は鬼灯の袖を引っ張っていく

「まってー、私も行くー!」




ーーーーーーーー




「あっ、鬼灯様っ!申し訳ございません、お急がし中…」

獄卒の一人が鬼灯に頭を下げる

「おっ!そいつ上官だなっ!?俺と勝負しろ!!!」
「・・・」

その場によくわからない空気が流れ出す

「ねぇ、茄子ー。この人誰?」

焔が桃太郎を指差す

「…桃太郎だよっ…」
「えー…なんか…以外と…じゃなくてめって古風で見目麗しゅう…」
「なっ…何がいいたいっ!?」
「鬼灯様…コイツなんとかなりませんか、微妙にしぶといんです、微妙に」
「微妙微妙言うなっ!!…お前、俺と勝負しな、それとも怖いか?」

桃太郎が鬼灯を指差す

「お前っ…失礼だぞっ」
「鬼灯様はなぁっ、偉いお方なんだぞっ!」

茄子と獄卒が鬼灯を庇うように鬼灯の前に出る

「フーン…どのくらい?」
「大したものではありませんよ、官房長官みたいなもんです。地味地味」
「ッキャーッ!!腹立つ!!!」
「んじゃぁ、私やるー!」

鬼灯の前に焔が一歩出る

「やめなさい、焔さん。馬鹿がうつるから近づいちゃいけませんよ」
「えー、弱そうですよ?勝ったら桃落としてくかもしれませんし…」
「そんなどこかのRPGの様なことは無いとおもいますよ」
「さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!殴る蹴るのタイマンはったろかぁ!?」

ついな桃太郎がぶち切れた

「別にいいですけど…たぶん痛いですよ?」

焔は肩に掛けていたポシェットからナイフとフォークを出してニタリと笑みを浮かべた


「いや…暴力は良くないよね…」

そう言うと桃太郎チームは会議を始めた

「…まっ…まずはお前達、試しに行ってくれっ…」
「…えー、いやだよー」

色々揉めた結果白い犬が目の前に出てきた

「ウ〜…自信無いn…」

ーバビィィィンー

岩に何かが刺さる鈍い音

「鬼灯様ァー、犬って食べれますー?」

さっきの音は焔が投げたフォークの音だ

「食べれるとは思いますが、たぶん不味いですよ?」
「じゃ、やめよ」
「シロが撃沈したぁぁぁ!!」

シロはその場に倒れ込んだ

「負け犬シロの仇っ…我らが!」
「チームのブレーン猿の柿助!」
「ロケットランチャー雉のルリオ!」

ーバビィィィン

「ヒィッ!」

これもまた焔が投げたナイフとフォーク

「お前は蟹殺したんだっけ?謝った?あと、たらば?ずわい?」
「過去の過ちは…過去の過ちは許してくれ…」

焔が目をかっ開いて柿助に迫ると、柿助は顔を手で覆い倒れ込んだ

「…雉鍋…」

焔がそう呟いてルリオを見ると
「俺は美味しくないです」と呟いて倒れ込んだ

「うわぁぁぁ同志ィィィィ!!?おのれ鬼めっ…所詮は血も涙もない奴よっ…桃太郎の剣術受けてみよ!」
「下がってなさい」

焔を下がらせて鬼灯が金棒を一振りすれば…
ーパキンッー

「あっ…イャァァァァァ!!!」

桃太郎の剣は折れて破片が岩に刺さった

「なんでこの人鬼ヶ島で勝てたの?」
「いやぁー鬼がベロンベロンに酔っててさぁ…」
「若さとビギナーズラックだよな…」
「そりゃ村のみんなは喜んでくれたさ俺達も誇らしかったけど…その後うぬぼれちゃったよなー」

ーパンッー

鬼灯が桃太郎の頬を叩く乾いた音が響く

「貴方、せっかく英雄として生きてきたのに死後こんなことしてて…情けなくないですか?」
「…そうだよ桃太郎…もうやめようよ…プライド守るために必死立ったんでしょ?」
「桃太郎…俺も色々言ったけど、本当はアンタが好きだから一緒にいるんだ、。でもな、過去の栄光にさァ…いつもすがってちゃダメなんだよ…"桃太郎だから鬼に固執する"なんて間違ってる」
「お…お前達…」

ルリオとシロの言葉に桃太郎が泣きそうになる

「あの、よければ犬猿雉さんは不喜処地獄へ就職しませんか?」

そんな感動シーンをぶち壊したのは鬼灯である

「えっ…」
「最初は契約、三ヶ月後正社員で」
「いいんですか!?」
「コラーッッ!!」

桃太郎ブラザーズもちゃっかり

「貴方にもぜひ転職していただきたい就職口があります」
「え」




その後、桃太郎ブラザーズは不喜処地獄へ。桃太郎は天国の桃源郷へ就職が決まったのであった






ーーーーーーーー

「さて、一応仕事が片付いたので閻魔殿な行きましょう」

問題児・桃太郎が片付いたので焔の仕事を聞きに閻魔殿に向かう





「閻魔大王、今日からここで働くことになっている焔さんです」
「え?そんなの知らないよ?」

閻魔殿に行くと大きな椅子に座っていたのはトトロの様なシルエットの閻魔大王だった

しかも焔の事は知らないらしい

「え…本当ですか?…就職決まったときにここって聞いたんですけど…」
「そうか…書類の見落としかな…?人員不足は一応解決したからなぁ…」
「では、私の補佐をしてもらいます」

閻魔大王が腕を組んで悩んでいると鬼灯が口を開いた

「え…そ、そんな重要なお仕事なんて私にはできませんよっ!」
「先程ここへ来る途中、唐瓜さんに貴女の事を聞きまして…」

それはほんのちょっと前のこと

ーーーーーーー

『焔さんはどういった方なんですか?』
『頭がすっごくキレキレで、俺達の世代でトップだっていうのをよく聞きますよ?』


ーーーーーーー

「…というのを聞いたんです」
「へー、焔ちゃん凄いんだねぇー」
「いえいえ、とんでもないです…」
「このアホのせいで私は忙しいんです。この
アホ分、貴女の様な人材が必要なんですよ。…それに、このアホのミスで貴女の働き口が無くなるなんて納得いきませんし」

鬼灯が閻魔大王をギロリと睨み付ける

「そんなアホアホ言わないでよっ!…でもまぁ、鬼灯君が忙しいのは事実だし…僕のミスかもしれないからねぇ…。そうだね、焔ちゃんに鬼灯君の補佐官をお願いするよ」
「え…ほんとですか!?」

閻魔大王の決断に焔の顔色が明るくなる

「えぇ、これからよろしくお願いします」
「こ…こちらこそよろしくお願いしますっ…」
鬼灯が焔に一礼すると焔も一礼する

「…ねぇねぇ、鬼灯君…君さ、ちょっと焔ちゃんのこと気に入ってるでしょ?」
「アホは黙っててください」

大王が小さな声で鬼灯の耳元で囁くと、鬼灯は手に持っていた金棒を振り上げた

ーパンパンッー

痛みに堪えて頭を抱える大王の横で鬼灯が手を叩く

「さ、アホはほっといて仕事に戻りましょう」
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