クダ主♀

□ある暑い日のホームにて
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「……暑いです」
季節は夏。
外ではギラギラと太陽が照りつけ、空には雲ひとつ無い。

でも此処はクーラーの効いた地下だし、本来なら暑さの心配なんてしなくていい。

そう、本来なら。

「そう? ぼくはへーき」
私を抱き締めた腕は緩めずに横から顔を覗き込んで、相変わらずへらへら笑うクダリさんを、私は貴方のせいでしょ、という気持ちを込めて睨み付けた。

「ノア、お腹いたいの?」

口元は笑ったまま。 声のトーンだけが心配した雰囲気を含んだ。
その上きっかり4秒おきに瞬きをするものだから、まるでアンドロイドだ。

「いえ……そういうわけじゃ、」
「よかった!」
ぎゅう、と抱き締める力が苦しい程に強くなる。
クダリさんのファンらしき女性トレーナー達の視線とひそひそ話が痛くて冷たい。
少し前まではハンバーガーとお菓子を交換する、たったそれだけの関係だったのに。
最近やたらにスキンシップが増えた(セクハラには当たらないけれど)ものだから、いつ週刊誌にすっぱ抜かれて誤解を招くか気が気ではなかった。

「ぼく、ノアがすき」
「え」

弾むようなトーンの声が私にだけ聞こえる音量でそう囁いた。

「そ、そんな、私なんてまだ、」
がきんちょじゃないですか、と。


「大丈夫。 ぼく おおきさなんて きにしない。
だからノア、 また48連勝して ぼくに返事して」
クダリさんはそう言い残すと、さっさとスーパーダブルに乗り込んでしまった。

ホームには私と、私に嫌な視線を送る女性トレーナー達が残された。
皆一様にボールを握っている。

「勝ち抜きか……久しぶり」

ニイィ、と私の口が勝手に三日月に歪む。


「ルミエラ、Burn away!」

挑戦しに行くのを邪魔されちゃ堪らないから、なんて心の中で言い訳をして、
私はLv100シャンデラのルミエラに大文字を命令した。


End

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