花京院×7th女主

□末期の黄昏
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馬鹿なことをしたな、と思う。 アタシがわざわざ飛び出したせいで、味方は一気に2人分の戦力を失ってしまった。
それでも、飛び出さずにはいられなかった。
アタシは、一体どうやったのか自分でもはっきり分からないけれど、とにかく飛べもしないのに飛び出して、
張り巡らされていた法皇の結界にもどういうわけだか触れずに、典明のところへ向かったのだ。

アタシとジョースターさんに背を向けて、独りで行こうとする典明を、放ってはおけなかった。
その孤独な背中を見送ってしまったら、もう二度と会えなくなるような気がした。
押し寄せる不安と焦燥に耐えられなかった。


この期に及んでこんなことを考えるのも馬鹿げているけれど……もしかしたら、アタシは典明のことが好きだったのかもしれない。
好きだったから、“死神13”に襲われたとき孤立した典明を庇おうと思ったのかもしれない。
好きだったから、典明が目を負傷したときには自分の左目を貸して、病院にまで護衛しについて行ったのかもしれない。

もっと早く自分の気持ちの正体を知っておくべきだったのだ。
いくらでも気づけたはずなのに、アタシは面倒がって深く考えることをしなかった。

過去の自分をぶん殴ってやりたい。
けれど、もう遅い。 なにもかも、もう。


意識が朦朧としてきた。 もうそろそろ、ドーナツみたいになった腹から、命が血と一緒に流れ出す頃だろう。
そう思っていると、ごほっ、という音に続いて、血がアタシの頬にかかった。

――ああ、無理すんなってば。バカ。 万分の1秒でも永く、アンタには生きていて欲しいのに。


何か大きなものを壊したような音が遠くで聞こえた。 気になるけれど、確認する術はない。


もう何も見えない。 身体がしんしんと冷えていく。
死ぬって、こういう感じなんだなあ、とアタシは他人事のように思った。
迎えが来るのももうすぐだ。 父さん母さん、それから姉さん。不孝な娘でごめんなさい。


誰かがアタシを抱きしめ、何かが腹に巻き付いたような気がしたのを最後に、アタシは意識を手放した。


〈END…?〉
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