□妹達7001〜9900号
1ページ/6ページ

[妹達〜7650]
≪休憩室前廊下≫



一方通行と名無しはいつも通り実験室での実験を終え、休憩室に向かうため廊下を歩いていた


「ねえ!聞いた?一方通行!」

「何が?」


名無しが不満そうに口を尖らせながら言う


「研究者の人が、ここらへんずっと休憩室に来ないから昼は何やってるんだろって思って話を盗み聞きしたらさ
歩いて10分くらいのファミレスみたいなところに行ってるんだって!」


珍しく不満そうだったから何があったかと思えばそう大したことでもなかった

だが、自分達を休憩室に押し込めてよく分からない健康食品やらカップ麺などを食わせておきながら
研究者だけで旨い料理を食べに言ってると思うと腹が立ってくるのはたしかだ


「…俺たちも行ってみるか?」


自分で言っておいてあとから「(何を言ってるンだ)」と少し後悔したがもう出してしまった言葉は戻すことはできない

名無しがもしかしたら今の自分の発言に顔をひきつらせているかもしれないと思うと名無しの方へ顔を向けるかとができない

だが


「いいね、抜け出して一泡ふかせてあげましょうか!」


と、予想外の返答があり、名無しの顔を思わず見る

そこには今までは見たことのない少し意地が悪そうで、だが本当に楽しそうに笑っている名無しがいた


「随分とノリがいいじゃねェか」


肯定するようにそう返す

名無しを見て、初めて自分が他人の心の中に入っていけたような気がして思わず顔が綻んだ





≪ファミレス店内≫

ファミレスまでの道中、緊張感と好奇心で心臓がずっと早かった

幼い頃、友達といたずらをした時のことを彷彿とさせる心情だ

あとは、一方通行と二人で外に出るということが初めてだったということもあるかもしれない


「いらっしゃいませ!お二人様でよろしいでしょうか?」


店内に入るとどこにでもいるような店員が笑顔で接客をしてくれる、内装もいたって普通だが


「白衣のやつが多いな」


一方通行が思わずつぶやいた、店内には白衣を着た研究者と思われる人が多く、全体の8割に及ぶのではないかというほどだ


「(さすがに研究所が密集している地区にファミレスなんて建てればこんな状況になるよね)」


店内の様子に少したじろぎながらも店員に「二人です」と答え、そのまま店員の指示にしたがって座席へ移動する

だが案内された座席は出入り口から一番近い場所で、店員は案内が終わると混んでいて忙しいためか足早と持ち場へ戻って行く


「ここだと店に出入りする研究員に丸見えだね」

「いいじゃねェか、元からそのつもりだったんだろ?」

「確かにそうだけど…」


元から研究員の鼻を折るつもりでやってきたがここまで堂々としていいものかと渋い顔をしてしまう


「変な顔してないで注文しようぜ、俺はもう腹減った」


一方通行はそう言いながら座席へ座る


「え、そんな変な顔してた?」


おかしな顔をしていたのかと少しの恥ずかしさを持ちながら慌てて自分も席へと座る


「ああァ、してたしてた
眉間にしわ寄せて阿修羅みてェな顔だったぞ」


小馬鹿にするように一方通行は言う

だが


「それっていつもの一方通行じゃん」


思わず口からその言葉がこぼれ落ちてしまうと一方通行はピタリと動かなくなってしまう

数秒の間、一方通行は眉間にいつも以上にしわを寄せながらこちらを見る


「ごめん、ごめんって!」


機嫌が悪くなった一方通行に反射的に謝る

だがそれだけでは不十分だったようで

ビシッ、と持っていたメニュー表で頭部をチョップされる


「いたっ」

「これで許してやる」


実際には体全体を強化してあったので全く痛みを感じなかったがこれも反射的に言ってしまう

だが痛くないという態度をしていればこれ以上何をされるか分からないのでこの反応が最適だろう


「どれもこれも年寄り向けのメニューだなァ」


周囲が研究施設ということもあり若い人向けのメニューは少ないようだ

その事実に一方通行の眉間のしわがまた寄っていくのが見える

それが面白くて一方通行の方を見つめてしまっているとこちらに気がついた一方通行と目が合う


「こっち見てンじゃなくてお前もさっさと決めろ!」


一方通行はなぜか少し焦りながらもう一冊のメニュー表を投げつけてくる

そんな一方通行の反応が面白いもので意地悪な返事をしてみたくなる


「フフフ、照れないでよ」

「…うるせェ」


否定しない返答が顔の熱を誘った
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ